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産業界にとっての日EU・EPA/EIAの重要性を確認−日EUビジネスセミナー(2)−

(フランス)

パリ事務所

2012年11月15日

ジェトロがパリ政治学院と10月9日に共催した「成長のための日欧パートナーシップの将来像」をテーマにしたビジネスセミナーの後半では、トヨタ自動車の欧州での活動と雇用への貢献、ヴァレオの日本市場への取り組みなどが紹介され、日欧の産業界にとっての日EU経済連携協定/経済統合協定(EPA/EIA、以下、日EU・EPA/EIA)の重要性が確認された。連載の後編。

<日本の自動車の現地生産がEU経済活性化に貢献>
第2セッションでは、成長に向けた日欧パートナーシップの将来について産業界の視点から議論した。まず、ジェトロ・パリ事務所の豊国浩治所長が日欧貿易投資の動向やその背景、日EU経済統合協定のインパクトなどについて説明した。「日本の対EU貿易黒字は着実に縮小している。これは構造的要因が大きい。自動車はかつて最大の貿易黒字項目だったが、日本メーカーは欧州での現地生産に切り替えている。今後もこの傾向が続く。日本からの自動車輸入が増えるというより、日本企業はEUでの生産拡大、EU経済の活性化をもたらすと考える」と話した。またEUの対日輸出について「日本は高齢化の進展で医薬品需要が拡大している。EUには競争力を持つ医薬品メーカーが多数あり、化学、医薬品部門でEUから日本への輸出は増大している。例えばフランスの医薬大手サノフィは日本で3,000人を雇用している。同社の日本法人はアジアの拠点と位置付けられている。2012年6月に同社は日本企業との合弁でマーケティング会社を設立した。こうしたことを通じ、さらに日本への輸出が拡大していくものと考える」と述べた。また日本政府による非関税措置の撤廃の動きについて「自動車だけでなく、食品添加物や医療分野でEU基準との協調を進めている」と強調した。

トヨタモーターヨーロッパの山田哲也渉外広報担当シニアコーディネーターは、フランスにおけるトヨタの活動の概要と国内雇用への貢献について説明した。同社は2001年からフランス北部オナン工場で「ヤリス」(日本名「ヴィッツ」)の生産を開始。現在は物流センターやデザインスタジオなど国内5ヵ所に事業所を設け、8,000人以上を雇用している。1990年以降、フランス国内に10億ユーロ以上を投資した。ストラスブールやグルノーブルなどにおいて公的機関・地方自治体・フランス企業と協力し、プラグインハイブリッドカーに関わる実証実験プロジェクトを実施している。フランス自動車大手PSAプジョー・シトロエンとはチェコで合弁生産を行っているほか、2013年の第2四半期から同社から小型商用車のOEM供給を受ける計画だ。「日本と欧州の市場は成熟しており、さらに厳しい経済環境の下で、日欧双方が持続的に成長できるシステムが必要だと考える」と話した。

<CO2削減分野で日本市場にビジネスチャンス>
フランス自動車部品大手ヴァレオのフランソワ・マリオン企業戦略・プランニング担当副社長は、日本市場の重要性を指摘した。日本を「戦略の柱」と位置付けるマリオン氏は「日本は二酸化炭素(CO2)排出量の大幅削減を打ち出しており、同分野で大きなビジネスチャンスがある」と述べた。EPA/EIAのインパクトについて「関税撤廃の影響はあまり受けない。重要なのは円滑な投資だ」と指摘。「自動車部品市場はさまざまな地域で現地生産が求められる。グループ内で日−EU、EU−米国といった地域間の流れより、日本、アジア、北米など地域内での流れの方が大きい」とした。また「ヴァレオが開発したストップ&スタートの技術を搭載した車は、日本ではハイブリッドカーに分類されるが、欧州ではそうではない。CO2排出量削減など地域間での規制の収れんが望ましい」とルールメーキングの必要性を訴えた。また「各国の補助金など研究開発(R&D)支援を外国企業も受けられるようになることが望ましい」(注)と述べた。さらに「日本には系列があり、外資企業が入っていくのは難しい。欧州ではこれがなく、日本とEUの構造的な違いになっている。このような違いが完全にバランスのとれた市場開放の実現を困難にしている」と指摘した。

セミナーのモデレーターを務めた日本機械輸出組合の住田孝之ブリュッセル事務所長は「日本市場に参入するのは難しいという声を聞くが、ヴァレオは日本市場を『努力が報われる市場』と見ているのか」と質問。これに対しマリオン氏は「難しい点もあるが、売り上げが3倍増になるなど努力が報われた」と応じた。また会場から出された「ヴァレオはどうやってグループの系列に入ることができたのか」という質問に対し「系列に入るには2つアプローチある。1つは系列会社への出資で、もう1つはイノベーションでこれまでにない製品をオファーすることだ」と答えた。これを受けて住田氏は「日本では新製品の提案能力が重要だ。日本人は新しいもの好きで好奇心が強く、良い新製品なら高い値段を払っても手に入れようとする。外国企業もヴァレオのようなことをできれば、成功のチャンスがある」と話した。

トヨタモーターヨーロッパの山田氏は「欧州車は舶来品イコール貴重なものというイメージがあるので高くても売れる」と説明した。「2011年のEU市場で日本からの輸入車が占めるシェアは3.9%だったのに対し、日本メーカーが欧州で生産した自動車のシェアは7.8%だった。一方、日本市場では欧州から輸入した車のシェアは5.5%と高い」と指摘、日本が欧州車に対し閉鎖的ではないことを強調した。また日EU・EPA/EIAがトヨタに及ぼす影響について山田氏は「欧州自動車市場は厳しい。トヨタはフランスで8,000人を雇用している。EPA/EIAにより経済を活性化する仕組みができれば、国内雇用を維持し、さらに発展させる契機になると期待している」と述べた。

最後にパリ政治学院のパトリック・メセラン教授は、欧州から見た日EU・EPA/EIAの利点について「世界第3の市場である日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に参加した場合、欧州企業が受けるだろう不利な扱いを消す効果がある。例えば、欧州の農産品は日EU・EPA/EIAがなければ、日本市場どころかアジア・環太平洋地域にも参入できなくなる」と説明した。また「日本はアジア市場と密接な関係にあり、欧州企業にとっても重要だ。日本とのEPA/EIAは世界で最も大きく、かつ、ダイナミックな地域であるアジアでのビジネス拡大の特権的な手立てとなるだろう」と欧州から見た日EU・EPA/ EIAの重要性を強調してセミナーを締めくくった。

(注)日本政府は2011年度に続き、2012年度、日本国内に統括拠点または研究開発拠点の整備事業を行うグローバル企業に、事業費の一部に対する補助を実施している(公募期間は2012年11月19日まで)。2011年度はベルギーのユミコア(工業化学品−触媒−)、オランダのディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックス(化学品−プラスチック)などが採択されている。詳細は、ジェトロウェブサイト参照。

(渡邊重信、山崎あき)

(フランス)

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