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日EU・EPA/EIAの経済効果を多角的に検証−日EUビジネスセミナー(1)−

(フランス)

パリ事務所

2012年11月14日

ジェトロは10月9日、パリ政治学院との共催で、「成長のための日欧パートナーシップの将来像」をテーマにしたビジネスセミナーをパリで開催した。産学官の講演者が、日・EU経済連携協定/経済統合協定(EPA/EIA、以下、日EU・EPA/EIA)が日欧両地域の経済成長に与える影響などについて検証した。ジェトロなどが投資貿易活性化や経済回復のツールとして同協定締結の重要性を訴えた。セミナーの内容を2回に分けて報告する。

<多大な経済効果が見込める日EU・EPA/EIA>
ジェトロの吉村宗一理事は冒頭のあいさつで「日本と欧州は、高齢化や、新興国が台頭する中での経済成長など共通の課題に取り組んでいる。また日本は震災からの復興、欧州は債務危機による景気下振れ回避といったそれぞれの課題を抱える」との現状を指摘、こうした中、「日EU・EPA/EIAの締結はこうした課題解決のために必要な新たなモメンタムとなる」との見解を示した。「EUが日本とEPA/EIAを結んだ場合、EUのGDPを429億ユーロ引き上げる効果があり、現在、EUがFTA締結に向け交渉を行っているカナダ(101億ユーロ)、ASEAN(44億ユーロ)を上回る」とし、日EU がEPA/EIAを締結した場合の経済効果の高さを強調した。また同理事は日EU・EPA/EIAの実現に向けジェトロが「欧州企業の公共調達へのアクセス向上を目的に、ジェトロウェブサイトで英語の調達情報サイトを運営するなどさまざまな活動を実施している」と説明した。

第1セッションでは日EU・EPA/EIAの意義や経済全般への影響のほか、欧州側の同協定への懸念分野である自動車、公共調達セクターについて検証を行った。慶應義塾大学総合政策学部の渡邊頼純教授は、アジアでは環太平洋パートナーシップ(TPP)、ASEAN+3、ASEAN+6、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)など複数の経済統合構想がある一方、「直接投資を通じたビジネス主導の統合」が進んでいること、日本は既に2国間経済連携協定(EPA)を13ヵ国と締結したことなどを説明した。今後の日本は「東アジアでカンボジア、ミャンマー、ラオスなどとEPAを結ぶ方向へ進むだろう。また環太平洋地域では、関税引き下げのほか、競争、投資、政府調達の透明性などのルールメーキングを含むTPPへの参加の方向に向かうことになろう。この2つの政策は2020〜21年にFTAAPにつながっていくだろう」との見解を示した。教授は「米国はTPP交渉に参加することで、躍進するアジアの経済成長を取り込むことに成功している。EUも東アジアの経済成長を取り込むため、日本とEPAを結んではどうか。日本はEUにとり東アジアのプラットホームになるだろう」と話した。

<貿易に加えサービス・投資分野の自由化で効果高まる>
経済産業研究所(RIETI)の川崎研一コンサルティングフェローは日EU・EPA/EIAのマクロ的な経済効果について、シミュレーションをもとに検証した。同氏は「2国間の貿易を自由化した場合の経済効果は各国の経済構造によるが、世界全体の平均では、各国に最大の便益をもたらす相手は中国、2位がEU、日本は3位でこれに米国が続く。地域間でEPAを結んだ場合のプラス効果と、EPAに参加していない地域に対するマイナス効果についてもばらつきがある。マクロ的な経済効果を高めるためには、EPAは広く取り組むこと、貿易自由化だけでなく、サービス・投資の分野でのルールメーキングといった統合を深めていくことが大事だ」と説明した。「地域間EPAの経済効果については、関税撤廃といった財の部分でみると、中国が入った東アジアの貿易自由化が日本のGDPを押し上げる効果は高いが、貿易の自由化だけでなく、サービス・投資の自由化といったルールメーキングの面での統合に広げていくと、米国やEUなど先進国との経済統合の効果が高まることになる」と述べた。また「EUは日本、中国、米国など2国間で貿易自由化を結ぶとプラス効果を得られるが、EUが参加していないFTAAPやTPPなどが結ばれた場合、EUが受けるマイナス効果は、EUが日本や米国との2国間の貿易自由化で得られるプラス効果よりも大きくなる可能性がある。東アジアの貿易自由化の波に乗り遅れると、EUは大きなマイナス効果を受ける懸念がある」と指摘した。

<自動車、公共調達市場の開放性について議論>
日EU経済統合協定について欧州産業界では最近も、化学、サービス、ITなど10の業界団体が推進を支持する声明を出す一方、自動車産業は協定締結に慎重な姿勢を崩していない。欧州国際政治経済研究所(ECIPE)のディレクターであるホースク・リー・マキヤマ氏は「貿易自由化協定は欧州自動車産業にダメージを与える」という仮定について検証を行った。同氏は「自動車は欧州における最大の黒字項目だ。特にハイエンド分野は年率で10%上昇している。ローエンド分野でも収支は均衡している」と指摘、「自動車産業が貿易自由化から恩恵を受けないというのは疑問だ」との見方を示した。また「日本の市場は欧州の自動車輸出に対して閉鎖的ではない。EUの対日輸出は他の地域への輸出の1.5倍だ。フランスによるハイエンド車の対日輸出は他地域への輸出の4倍に達する。日本では欧州車の価格は9割ほど高いが、それでも日本の消費者は欧州車を買う」と話した。さらに「欧州は収益率が最も低い地域。EU域外に輸出しているメーカーは過去最高益を記録している。EUにおける自動車需要が回復する可能性は小さい。自動車の最大市場はEU域外にあり、自動車産業の生き残りは輸出にかかっている」と強調した。

また、日本の公共調達市場について欧州委員会は日本市場の閉鎖性を指摘、交渉開始の条件に公共調達に関するアクセス改善を求めている。OECDのセバスチャン・ミルド貿易局貿易政策アナリストは「公共調達市場の開放度を測定するのは難しい。欧州委員会は日本の市場が欧州に比べ閉鎖的だと主張する際、WTOの政府調達協定に準拠し、一定の基準を超える契約しか対象にしていない。開放率を公共部門の輸入量をベースに算定すると、日本の開放率はフランスやドイツより高いことが分かる。米国とEU27ヵ国の開放率はほぼ同じで、中国の開放率が最も高い」と述べた。このため「公共調達における相互主義の下では、EUは中国にもっと市場を開放しなければならなくなる。相互主義の原則はEUにとってあまり良い結果を生まない」との見方を示した。

会場からは「日本では外国車が高い価格で売れるのはなぜか」という質問が出された。これについてホースク・リー・マキヤマ氏は「日本の消費者はフランスの高級ブランドに対する購買意欲が強い。中国と日本はGDPの規模では肩を並べたが、消費水準でいえば、日本は中国の2倍ある。欧州企業が日本市場に早急に参入しなければならない理由だ。アジアの経済統合は急速に進んでいる。(何もしなければ)今後10年以内に欧州企業は市場に参入できなくなる可能性がある」と述べた。

(渡邊重信、山崎あき)

(フランス)

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