駐在員の社会保険料を帰任後に早期還付へ−社会保障協定締結国向けのルール整備進む−
ニューデリー事務所
2012年11月07日
政府は、外国人駐在員に対する社会保険料の新たな還付方針を発表した。発表によると、インドと社会保障協定(SSA)を締結する国の駐在員が、インドでの駐在期間中に積み立てた社会保険料は、現状の「退職後かつ58歳以上」という条件にかかわらず、帰任後に速やかに還付されることになる。
<日本人にも協定発効後に適用>
政府は、外国人駐在員に対する社会保険料の新たな還付方針を10月5日付の官報(PDF)で発表した。これによると、インドとSSAを締結している国の駐在員がインドで積み立てた社会保険料は、「退職後かつ58歳以上」という従来の還付条件にかかわらず、帰国後に速やかに還付されることになる。また、還付口座についても、インド国内の銀行に開設した加入者個人名義の口座だけだったが、雇用主の法人口座も選択することができるようになる。
日本とインドはSSAを締結しておらず、社会保険の二重加入が問題視されている。特に、インドの社会保険料は、全世界所得の約24%という高い料率が課せられていることに加え、加入者が58歳になるまで掛け金の還付が受けられないなど、企業・駐在員にとって大きな負担となっていた。また、帰国後も、還付を受けるためにルピー口座を残しておく必要があり、不便なルールとなっている。58歳まで還付が受けられないため、「実質掛け捨てとなっている」(進出日系企業)ケースも少なからずあるようだ。
こうした状況を打開するため、日本とインドの間でSSA締結の協議が始まり、2012年5月に実質合意に至っている(2012年6月6日記事参照)。SSAの発効には両国国会での批准が必要で、発効後は日本人駐在員も新制度の適用対象となる。
ただし、今回の官報では、還付の対象となる積立金(EPF)や年金基金(EPS)の範囲、それらの具体的な返還方法などについては明記されていないため、引き続き制度の詳細を精査する必要がある。
(川野智成)
(インド)
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