会社設立の申請フォーム変更、審査厳格化の兆し

(サウジアラビア)

リヤド事務所

2012年10月17日

外国投資認可機関のサウジアラビア総合投資院(SAGIA)は8月にライセンス申請フォームを変更した。新フォームでは、投資後の事業計画を中心に、記載項目が増えている。その他手続きについても、公式な通知を伴わない変更がみられるため、ジェトロは企業から問い合わせのあった事項について確認した。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<サウジ人雇用計画を具体的に記載>
2012年8月から「SAGIAライセンス申請フォーム」が変更となり、複数の項目が追加された。新フォームは旧フォームと同様にSAGIAダウンロードセンターから入手できる。

新フォームでは投資プロジェクトの詳細、特に投資後5年間の事業計画をより細かく記入することが求められている。また、工業団地・経済都市内に立地する予定の有無、原材料の現地調達の割合など、サウジの産業育成やサウジ人雇用への貢献度を問う項目が増えている。特にサウジ人の雇用については、投資後5年間でどのような職種を何人ずつ増やすのか、1年ごとに具体的な数字を記載することが求められている。

このフォームの変更により、旧フォームで申請準備を進めていた企業が、新フォームによる再提出を求められるという事例が発生している。申請を検討している企業は、旧フォームで提出することがないよう注意する必要がある。

<商業登記とイカマはどちらが先でも可>
企業設立手続きについて、かつてはSAGIAライセンスの取得後、代表者(GM: General Manager)のイカマ(住民登録証)を取得した後に商工業省に商業登記(CR: Commercial Registration)を行うという順番だったが、最近はCRを先に行うことを要求される企業が増えている。

本件について、SAGIAのサウード・アル・サウード中央地区センター長に確認(9月12日)したところ、SAGIAライセンスの取得後、銀行口座を開設して資本金を払い込んだ後は、CRとイカマ取得の順番は問われない。ただし、先にCRを行う場合には、SAGIA政府担当部(Government Relation Department)からサポートレターをもらう必要がある。一方、イカマを先に取得する場合、企業は「1ヵ月以内にCRを行う」と誓約したレターをSAGIAに提出しなければならない、とのことだった。

CRの取得を先に要求される数が増加した背景には、イカマの取得後、CRを取得せず(企業を設立せず)国内に滞在するケースが多く発生しているため、SAGIAがこうした不正企業の取り締まりを強化したいという意向があるようだ。

現在の手続きは添付資料のとおり。SAGIAライセンスの取得後に、CR取得手続き(工業省)とイカマ取得手続き(労働省・内務省)を同時に進めても構わない。

<企業設立前のサウジ人雇用義務はなし>
申請した企業からは、CRや代表者のイカマ取得の前に(企業を設立する前に)、サウジ人1人を雇用する必要があると言われたとの相談も寄せられている。

本件について、当地の複数の弁護士事務所(サウジ人弁護士)に確認したところ、「企業設立の前に(CR取得の前に)従業員を雇用することは、物理的にできない。ただし、労働省が、同省の手続きはサウジ人しか行えないと定めているため、会社設立後、労働省に従業員の査証取得手続きを行う前にはサウジ人を雇用している必要がある。企業設立前にSAGIA内の労働事務所に申請を行うのもサウジ人でなければならないが、この時点でサウジ人を雇用する義務はなく、サウジ人の弁護士やコンサルタントに代行業務を依頼すればよいはず」との説明で、「現状のところ、企業設立前のサウジ人雇用は義務ではない」とのことだった。

100%外国資本による企業設立の場合に必要な出資者の人数についても、多数の日本企業から照会が寄せられる。同センター長によると、「有限会社(LLC)」を設立する場合は2人以上の株主(法人、個人のいずれも可)による出資が必要となるが、設立するのが「支店」の場合は100%全額1社からの出資でも問題ない、とのことだった。

サウジアラビアにおける企業の設立手続きについては、規則が分かりにくいという声、SAGIAの対応への不満などが伝わってくる。SAGIAは新総裁の就任を機に(2012年5月29日記事参照)、組織の見直しと手続きの変更に取り組んでおり、申請書の変更、不正企業の取り締まりの強化は、SAGIAの企業設立における審査基準の厳格化を感じさせる。サウジでの企業設立を申請・検討している企業は、これまでに以上に十分な情報収集をすることが求められる。

(米倉大輔)

(サウジアラビア)

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