サービス税のネガティブリスト方式導入は順調

(インド)

ニューデリー事務所

2012年09月26日

サービス税の税体系の見直しから、約3ヵ月が経つ。ネガティブリスト方式の導入を柱とする今回の改定により、同リストに掲載された17のサービスだけが課税対象外となった。政府は今回の改定をサービス税の徴税強化や物品サービス税(GST)への早期移行の弾みにしたいとしているが、現在のところ大きな混乱は起きていないようだ。

<政府は税収拡大とGSTの早期導入を期待>
インドでは1994年以降、18年間にわたりサービス税の課税対象にポジティブリスト方式が採用され、直近では119のサービスが対象となっていた。しかし、政府は財政赤字縮小のための徴税強化を主目的とし、サービス税の税率の引き上げ(10%から12%へ、4月1日施行)とネガティブリスト方式への完全移行を宣言、7月1日に即日施行した(2012年3月27日記事参照)

ネガティブリストへの移行理由は次の2点だ。

第1は、総税収に占めるサービス税の割合が小さいことだ。2011年度(11年4月〜12年3月)のGDPに占める割合は、サービス業が最も高く、6割を超えたが、同年度の税収総額に占めるサービス税収は1割にすぎない。この乖離を是正し、サービス業からの税収割合を増やすことが課題となっている。

第2は、将来のGST導入に向けた足掛かりとすることだ。政府は、産業界からの強い期待を受け、物品税、サービス税などの間接税を一本化するGSTの導入を検討しているが、サービス税の構造が複雑であることや、各州の税収減への懸念などが原因で依然実現していない。ネガティブリスト方式への移行がサービス税の構造を簡略化し、GSTへの円滑な導入を促進することが期待されている。

<課税対象外のサービスを補足>
ネガティブリストには、課税対象外となる17のサービスが列挙されている。具体的には、2012年度予算Finance Actの第5章サービス税の66項Dに詳細な記載がある。主なものとしては、中央政府・地方政府・インド準備銀行(RBI)・大使館などが提供するサービス、農業関連サービス、商品の売り買い、商品の製造にかかる一連のサービス、ラジオ・テレビ以外の広告利用料、道路使用料の支払い、公営ギャンブル・公営くじ、娯楽施設などの入場料、送電・配電、一部の教育サービス、住居賃貸、一部の金融サービス、公共交通、一部の輸送サービス、葬儀関連サービスなどが含まれる。ネガティブリスト方式の導入により、サービス全体の約60%が原則として課税の対象となった。

さらに、政府は6月20日に通達No.25/2012−Service Taxを発表し、ネガティブリストに加えて、課税対象としない39のサービスを補足的に明示した。この39のサービスには、国連や国際機関が提供するサービス、大使館へ提供されるサービス、健康管理・医療、宗教、法務、文化、スポーツ、芸術・文化・スポーツの技能訓練、ジャーナリスト、インフラ建設、北東州における航空交通、特定保険、公共図書館、公衆電話、公衆トイレなどが含まれている。

<輸出免税の扱いが1つの論点に>
サービス税の税体系の見直しから3ヵ月が経つが、産業界には大きな混乱はみられない。サービス業を営む地場企業は「今回のネガティブリスト導入により、自社のサービスが課税対象となるか否かが明確になったので良い動きだと思っている」とコメントした。影響の大きさについては、「税率の上昇以外には、ネガティブリスト導入などに伴う税体系の変更による影響は少ない」と回答する企業が多かった。

一方、進出日系企業への影響はどうか。そもそも、インドに進出する日系企業は製造業や輸入販社が多く、サービス業の範囲となる事業を営む企業の絶対数はまだ少ないといえる。日系企業が提供するサービスが今回のネガティブリスト導入に際して新たに課税対象となったというケースは少ないようだ。ジャパンデスクを構える会計事務所の担当者も「今回のネガティブリスト導入自体にそれほどの影響は生じないものと思われる」とコメントしている。むしろ、今回のネガティブリストの導入と同時に輸出免税(取引自体は課税対象だが、サービス提供先が海外であるため免税となる)の定義が明確化された(通達:No.36/2012−Service Tax)ことを指摘する。これ自体も大きな変更ではないが、「現在、輸出免税の規定により、サービス税を免税処理している取引がある企業は、現在のスキームや契約書などの見直しが必要かもしれない」(同担当者)とし、定義の再確認の必要性を示唆した。

(西澤知史)

(インド)

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