ポスコが吉林省で物流団地建設に着手−北朝鮮の港を活用−

(韓国、北朝鮮、中国)

中国北アジア課

2012年09月25日

韓国大手鉄鋼メーカーのポスコが現代グループと合弁で、中国吉林省の琿春(フンチュン)市に大規模な物流団地を建設することになり、9月11日に着工式が行われた。中国・北朝鮮・ロシアが国境を接する地域に建設され、中国東北地域で生産された物資を、遼寧省の大連港を経由せずに、物流団地から90キロ離れた北朝鮮の羅津港などを活用し、中国南部、日本や韓国、ひいては東南アジアなどに輸送する際の中継基地になるものと注目されている。

<国際合作モデル地区に建設>
ポスコが着工したのは、吉林省延辺朝鮮族自治州琿春市の国際合作モデル地区(注)にある1.5平方キロの土地に、2,000億ウォン(140億円)を投じて建設する物流団地。社名は「琿春ポスコ現代国際物流団地」、ポスコ建設が50.1%、ポスコ・チャイナが14.9%などポスコグループが全体の80%を出資する。残りの20%は現代グループが出資し、現代商船が15%、現代ロジスティクスが5%を出資している。

事業を主導しているポスコは2010年7月に吉林省政府と投資の覚書を交わしてから2年余りを経て、着工にこぎ着けた。まず第1段階として、物流倉庫や集配センター、コンテナ野積み場を建設し、14年1月の運用開始を目指している。初年度の物量処理能力は20万トンを見込んでおり、19年に第3段階の工事が終了すれば、年間1,300万トンの処理能力になる計画だ。

ポスコはこの用地を中国政府から1平方メートル当たり175元(2,485円程度)で50年間契約で借りており、保税区域指定や各種税制支援の恩恵を受けることができる(「毎日経済新聞」9月11日)。

<東南アジアにも物資輸送>
9月11日に行われた着工式には、韓国側からポスコの鄭俊陽(チョン・ジュンヤン)会長、現代グループの玄貞恩(ヒョン・ジョンウン)会長、李揆亨(イ・ギュヒョン)駐中韓国大使、中国側からは吉林省共産党委員会の孫政才書記、同省延辺朝鮮族自治州共産党委員会の張安順書記らが出席した。

最初にあいさつした鄭俊陽会長は、中国関係当局の配慮に感謝するとともに、北朝鮮の港を活用して、韓国、日本だけでなく東南アジア、ひいては中東地域への物資輸送にも大きな助けになると述べた。また、「吉林新聞」(電子版9月11日)によると、孫政才吉林省党書記は「吉林省は中国の中でも地理的に韓国に近く、産業や経済の結び付きが強く、ポスコ・現代グループが進出することは吉林省の振興と発展に重要な力となる」とし、今後もより多くの韓国企業が吉林省に投資し、共同で発展することに期待感を示した。さらに、延辺朝鮮族自治州の張安順書記は、ポスコ、現代という世界的にも著名な企業が延辺地域に進出したことを評価するとともに、建設プロジェクトを支援していくと述べた。

<東北アジアの物流拠点へ布石>
「朝鮮日報」(9月11日)は、ポスコ関係者の「琿春での物流団地の建設は当面の利益というよりも、羅津港の開港で豆満江(中国名・図們江)河口が東北アジアの物流拠点として成長することに備えた布石だ」というコメントを紹介している。

このほか、中国が経済開発に力を入れている東北部に物流団地を建設することで、ポスコとしては、地域開発に寄与できると判断したとされる。また、北朝鮮とのビジネスを手掛けてきた現代グループと手を組むことで南北関係が改善されれば、北朝鮮ビジネスにも乗り出せるため、今回の団地建設に踏み切ったと考えられる。

中国は2008年に羅津港の1号埠頭(ふとう)の使用権を獲得したのに続き、羅津港4〜6号埠頭の建設権と50年間の使用権を取得している。「聯合ニュース」(電子版9月10日)は、「延辺日報」(9月10日)を引用し、吉林省の民間企業「延辺海華集団」が北朝鮮港湾総会社と合弁で、清津港3〜4号埠頭を30年間共同で利用・管理することで合意したと報道した。

今後は北朝鮮が中国に対し、日本海側の港をさらに開放するのではないかとみられている。

(注)中国政府が2012年4月に指定した他国との国境地域に隣接する初めての国家級経済特区で、90平方キロメートルの広さがある。保税区域の適用を受け、各種税制優遇措置が受けられる。

(根本光幸)

(韓国・中国・北朝鮮)

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