日本企業も求められる省エネ法対応−適合性評価制度と省エネルギー法のセミナー−
ハノイ事務所
2012年09月10日
ジェトロはハノイで、ベトナム日本商工会などとともに「適合性評価制度および省エネルギー法セミナー」を開催した。省エネルギー関連法令は2011年1月1日から順次施行されており、指定事業者(エネルギー大量使用施設)は対応を求められている。また、製品・機器に対する省エネルギーラベルの貼付は、13年1月から部分的に義務化されるので、進出日系企業にも大きな影響がある。
<指定業者に省エネルギー計画策定を義務付け>
セミナー(7月30、31日)での商工省の説明によると、規制対象となるエネルギーの年間消費量が大きい「指定事業者」は以下のように定義される。
a.年間エネルギー消費量が1,000TOE(石油換算トン)以上の工場、農業生産場、輸送機関
b.年間エネルギー消費量が500TOE以上の建物(事務所・住宅)、教育・医療・娯楽・スポーツ関係施設、ホテル、スーパー、レストラン、店舗
商工省が取りまとめた指定事業者リストは、首相決定として毎年公布される。現行のリストは2011年8月1日付首相決定No.1294/QD−TTgで公表され、約1,200社(うち日系企業は約50社)が指定を受けた。
これらの指定事業者は、以下のような義務を果たさなければならない。
○省エネルギー計画書の策定、実施と報告
年次計画書と5ヵ年計画書を策定しなければならない。それぞれ実施後に報告書を作成する。計画書、報告書とも年次分は毎年1月15日、5ヵ年分は初年の1月15日までに提出しなければならない。
なお、計画書や報告書は、NEDS(National Energy Database System)というウェブ経由か書面によって各管理局に提出しなければならない。
○エネルギー管理士の指定
エネルギー管理士は、省エネルギー計画書策定、管理ネットワークの構築、エネルギー管理モデルの導入などのサポートを行う。エネルギー管理士となるには、所定の研修受講後、資格試験をパスしなければならない。合格者に対して商工省は証明書を発行する。
○エネルギー診断の実施(3年ごと)
エネルギー診断は、各施設のエネルギーの使用状況を調査・測定して省エネの可能性を検証し、省エネ対策などを提案する。3年ごとに、エネルギー診断士が実施する。事業所内部での自己診断か、外部の診断業者に委託する2つの方法がある。
エネルギー診断士になるには、エネルギー管理士と同様、所定の研修を受講後、資格試験にパスしなければならない。合格者に対して商工省は免許証を発行する。
政府は2009年から国家予算で研修制度を設け、毎年約100人のエネルギー管理士を育成しているが、指定事業者数に対して絶対数は不足している。
<60W以上の白熱電球は禁止>
省エネルギーラベリング制度では、2種類のラベルが規定されている(表1参照)。
製品・機器のカテゴリーごとに定められた省エネルギーラベルの貼付スケジュールおよびエネルギー最低効率レベル(MEPL)適用スケジュールは表2のとおり。
関連法令によれば、2013年1月1日以降、消費電力60ワット(W)超の白熱電球は輸入・製造・流通が禁止され、家電カテゴリーの製品はエネルギーラベルの貼付が義務付けられる。2014年1月1日以降は、エネルギー最低効率レベルを下回る家電カテゴリーの製品は輸入・製造が禁止される。各企業は省エネに対応した製品・機器の開発が求められるとともに、輸入あるいは製造した製品・機器のエネルギー効率試験を受けなければならない。
省エネルギーラベルに関する情報は、商工省のウェブサイトを参照。
<エネルギー管理士の育成など課題も>
違反行為に対しては、「警告」または「罰金」の罰則が科される。2011年8月24日付政令No.73/2011/ND−CPに記載されている罰則内容を一部紹介する。
【第10条】指定事業者のエネルギー診断に関する違反
1.規定のフォームによる診断報告の内容に従わない行為に対し、警告する。
2.規定に従ってエネルギー診断を実施しない行為に対して、5,000万〜7,000万ドン(1ドン=約0.004円)の罰金を科す。
【第21条】エネルギーラベル貼付証明書およびエネルギーラベルの使用に関する規定の違反
5.エネルギーラベルを貼付すべき手段・設備にエネルギーラベルを貼付しない行為に対して、
1回目の違反は、警告する。
2回目の違反は1,000万〜2,000万ドンの罰金を科す。
3回目の違反は3,000万〜5,000万ドンの罰金を科す。
関連する日系企業は速やかな対応が求められている。他方、商工省による講演後の質疑応答で、エネルギー効率を測定する試験機関の現況やエネルギー管理士の人材育成状況などについて質問が出た。答えの中で、国内の試験機関は限られ、かつその測定能力も劣っていること、必要とされるエネルギー管理士は不足しており、育成にはまだ時間を要することなどが明らかになり、政府側の課題も浮き彫りとなった。
省エネルギー法を含む関連法令は表3のとおり。ジェトロでは和訳を行い、ウェブサイトで公開している〔ジェトロ・海外情報ファイル(J-FILE):ベトナムの各種制度に関する情報〕。
(藤森義人)
(ベトナム)
ビジネス短信 5049acb8153d8




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