補助金支給で若年失業者の雇用創出へ

(フランス)

パリ事務所

2012年09月06日

政府は8月29日、就労が困難な若年層向けの雇用対策として、16〜25歳の若者の最低賃金の75%を国が負担する「未来雇用契約」の導入を閣議決定した。これにより、地方自治体や非営利団体など公的部門を中心に2014年までに15万人の雇用創出を見込むが、産業界などからは効果を疑問視する声も出ている。

<公的部門が中心だが、民間部門の利用も認める>
未来雇用契約とは、就労が困難な若者に対し就労機会の提供を促すもので、オランド大統領の政権公約に沿ったもの。大統領は失業率が20%を超える若年労働者の雇用機会の創出、社会参画の促進を優先政策の1つに挙げていた。未来雇用契約の対象となるのは、無資格・低学歴などで就労が困難な16〜25歳の若者、特に都市政策の最優先対象地域で、失業率が高い「脆弱(ぜいじゃく)都市地域(ZUS)」の若者を優先する。

この契約に基づく就労者の給与について、政府が最低賃金の75%を負担する。契約期間は最長3年。契約を利用できるのは、公益性が高く、持続的に雇用創出が見込める地方自治体や非営利団体など公的部門だが、民間部門でも環境・省エネ、デジタル経済、観光、介護など成長が見込める分野では利用を認める。政府は2013年に10万人、14年に5万人、合わせて15万人の雇用創出を見込む。経費は23億ユーロになる見通しだ。

<政策効果に懐疑的な見方も>
未来雇用契約は、1997年に社会党のジョスパン政権(当時)が導入した「若年層雇用促進策」の適用範囲を、一部の民間部門にも広げたもの。この促進策により、97年から5年間で約31万人の雇用が創出されたと試算される。25歳未満の失業率は97年第1四半期の23.4%をピークに、2001年第1四半期には16.0%に低下した。

しかし、今回の未来雇用契約については「失業率を引き下げるような大きな効果は見込めない」と指摘する声が出ている。1997年の若年層雇用促進策が欧州通貨統合を背景にした景気拡大期に重なっていたのに対し、現在は欧州債務危機の影響で景気が減速、若年層を中心に雇用情勢の悪化が進んでいるからだ。25歳未満の失業率は2012年第1四半期に23.3%となり、危機が深刻化した11年第3四半期に比べ1.0ポイント上昇した。12年7月時点の25歳未満の雇用センター(日本のハローワークに相当)の登録者数も47万1,700人と、11年7月からの1年間で3万2,100人増えた。政府発表によると、16〜25歳の無資格の若年層は全国に61万人。このうち41%が失業しているという。

民間の景気経済研究所(OFCE)は2012年8月2日、未来雇用契約を利用して15万人の若年雇用が創出されたとしても、その一部は国からの補助金を受けない労働者の雇用機会を奪うかたちで創出されることを考慮すると、雇用創出数はネットで11万人を割る水準にとどまるとの試算を発表した。日本の経団連に相当するフランス企業運動(MEDEF)のパリゾ会長も「(財政赤字削減に苦しむ中)地方自治体などの職員を増やす時期なのか疑問だ」との見解を示した。

(山崎あき)

(フランス)

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