「財政協定」の批准に改憲は不要−憲法評議会が結論−
パリ発
2012年08月22日
憲法評議会は8月9日、「財政協定」の批准に当たり憲法改正を行う必要はなく、国家組織法で財政規律を制定することが可能であると判断した。これを受け政府は、9月末にも同法案を議会に提出することを明らかにした。
<「黄金律」の導入は国家組織法で可能>
2012年3月に欧州理事会(EU首脳会議)でフランスを含む25ヵ国が署名した「経済通貨同盟の安定・協調・ガバナンスに関する条約」(以下、「財政協定」)は、第3章3条1項bにおいて、締約国は構造的財政赤字を名目GDP比で0.5%以内に抑えなければならないとする、通称「黄金律」を定めている(2012年3月5日記事参照)。
財政規律で欧州の模範を示そうとしたサルコジ前大統領は、憲法を改正して「黄金律」を追記することを目指したが、オランド現大統領はこれを不要と考え、7月13日に憲法評議会へ憲法改正の必要性の有無を付託していた。
憲法評議会は8月9日の発表で、フランスは1997年に安定・成長協定が採択されて以降、EUの財政規律下にあり、構造的財政赤字のGDP比の上限を1%から0.5%へ引き下げることは既存の取り組みの強化にすぎず、これにより国家主権が侵害されるものではないとした。
続けて、「財政協定」が定める財政規律を国内で有効とする措置は、国内法への拘束的かつ永続的な措置としてとられるべきではなく、各国の決定に帰すると述べた。その上で、フランスでは改憲の必要はなく、憲法より下位の「国家組織法」で財政協定における「黄金律」を導入すべきだと結論付けた。
これを受けて、ピエール・モスコビシ経済・財務相らは9日、8月末に「財政協定」の批准を承認する法案を、また9月中に「黄金律」について記載した国家組織法案を議会に提出することを明らかにした。
「ル・モンド」紙(8月10日)によると、「財政協定」の批准承認法案に関する議会での投票は9月末までに行われる見込み。本件をめぐっては左派が分裂しており、同紙は左派戦線や欧州エコロジー・緑の党の一部、社会党議員の数人が反対すると見込んでいる。他方、国民運動連合(UMP)や中道派らは賛成するとみられる。
(上田暁子)
(フランス)
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