税制改革案の骨子、与野党合意で固まる
コペンハーゲン発
2012年07月30日
政府は6月22日、野党2党との協議の結果、税制改革案をまとめた。与党が5月に発表した原案の一部に修正が加えられ、与野党間で合意に至ったものだ。合意案は経済危機からの早期脱却と経済成長策から成り、長期的にはデンマーク経済を安定させるため、約1万5,000人規模の雇用増を目標としている。
<長期的な財政安定と雇用増を目指す>
社会民主党、社会自由党、社会人民党の3党から成る中道左派連立政権は6月22日、野党の自由党、保守党との協議の結果、税制改革案の修正について合意した。この合意案は、与党が5月29日に発表した原案「全国民に職を−税制改革案」に基づくもので、2022年までに1万4,600人の雇用増加とともに140億デンマーク・クローネ(1クローネ=約13円)強の労働関連税の減税が見込まれている。
今回の税制改革案は、30億クローネを投入して、国家財政の安定を図ることなどを目指している。さらに、家庭への経済効果も示している。
<家計への影響を考慮した減税も>
減税の中身は次のとおり。
○個人所得税の最高税率の対象所得額を2022年までに段階的に引き上げる。
○勤労所得税額控除(注)を12年の4.4%(13年は5.6%)から22年に10.65%になるよう段階的に引き上げる。また、控除枠の上限を現在の1万7,900クローネから3万4,100クローネに引き上げる。
○通常の勤労所得税額控除に加え、片親を対象とした控除の新規導入。上限2万クローネ分の控除となる。
○09年に導入された娯楽税の廃止。代わりに、金融業界への課税を実施。
<9月には議会承認の見通し>
税制改革案は、6月22日の野党2党との合意を受けて、25日に政府が正式に承認、7月2日に法案化された。現在、法案の最終調整が行われており、2012年9月13日には議会で承認される見込みだ。
現在の少数連立政権は、閣外協力の左派の赤緑連合の支持を得て初めて議会で過半数となる。そのため、政権樹立以来、赤緑連合の政策に配慮しなければならない状況が続いていた。その一方で、与党の社会自由党は、前・中道右派政権と合意したいくつかの政策を維持することを強く主張しており、連立を組む社会民主党と社会人民党も選挙前に約束した政策の変更など、妥協せざるを得ない状況となった。
税制改革案で与野党協議が比較的スムーズに合意に至ったのは、与党が野党に歩み寄り、当初から野党案との類似点が多かったからだ。中道的な政策を採用した今回の税制改革案では、社会保障の充実や高所得者への大幅増税を主張している赤緑連合と、極右のデンマーク国民党は協議に加わっていない。
(注)勤労所得税額控除は、就労促進や所得再分配の強化を目的として勤労者個人の所得を対象に税控除を認める制度で2004年に導入された。
(安岡美佳)
(デンマーク)
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