政策金利を0.25ポイント引き下げ0.5%に
プラハ発
2012年07月05日
国立銀行(CNB、中央銀行)は6月28日、政策金利を0.75%から0.25ポイント引き下げ、0.5%とした。チェコ史上最も低く、現在のEU域内でも最も低利となる。
<経済の低迷とインフレ圧力低下が背景に>
利下げ決定の背景には、国内の景気低迷がある。2012年第1四半期のGDP成長率は、前年同期比でマイナス0.7%、前期比でマイナス0.8%。経済を牽引しているのは自動車輸出に支えられた純輸出のみだ。また、かつて輸出とともに経済を押し上げていた内需、特に個人消費は、前年同期比マイナス2.9%、前期比マイナス2.3%と大きく後退した。4月の小売売上高も前年同月比4.1%減で、過去2年間で最大の減少率を記録した。
このような状況にもかかわらず、5月3日に実施された前回のCNB理事会で利下げ決定されなかったのは、消費者物価上昇のリスクが危惧されたためだ。12年1月の消費者物価上昇率は前月の2.4%から3.5%に上昇、5月の消費者物価上昇率も3.2%で、CNBのインフレ目標値2.0%を大きく上回っている(図参照)。物価上昇の要因は、12年1月から付加価値税の軽減税率(食品、医薬品、書籍などに適用)が10%から14%に引き上げられたこと、および燃料価格が高騰したことにある。このうち、燃料価格については、ユーロ圏で石油小売価格の上昇が抑えられつつあり、チェコ国内でも石油小売価格が下落に転じた。CNBは、国外からのインフレ圧力の影響が限られつつあると判断し、今回の利下げに至った。
シンガーCNB総裁は理事会後の記者会見で、「経済の全体像からみて、大きなインフレ圧力が生じるとは考えにくい。さらに政府が検討している財政緊縮策、および外国、特にユーロ圏における経済状況を鑑みれば、今後も物価上昇の圧力は軽減されていく傾向が続くと思われる」と述べた。
<市中銀行の多くは利下げに慎重か>
既に市中銀行のうち一部は、CNBの決定に反応している。大手のチェコ預金銀行は、7月から1年・5年物の貸出金利を0.15ポイント引き下げると発表した。
しかし国内アナリストの大半は、引き下げ前の貸出金利もチェコ経済にとって障害になるほどの高さではなかったとし、今回の利下げは象徴的なものにすぎないとみている。リーマン・ショック後の09年にCNBが4度にわたって利下げしたときも、市中銀行の貸出金利に大きな変動はなかった。チェコ預金銀行のように金利引き下げを行うところも一部にあるものの、全体的には、今回も各銀行は貸出金利の引き下げには慎重な姿勢を取ると予想されている。
また今後の政策金利については、少なくとも12年いっぱいは0.5%が維持され、13年に景気回復の兆しが現れた時点で利上げが検討されるとの見方で、アナリストは一致している。
(中川圭子)
(チェコ)
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