リサイクル率引き上げへ、新廃棄物処理法が施行

(ドイツ)

ベルリン発

2012年07月03日

新廃棄物処理法の循環経済法が6月1日に施行された。プラスチックや金属といった資源のリサイクル率の向上とエネルギーなどへの利用促進が狙いで、住民はこれまで以上に細かいごみの分別が求められる。リサイクルで発生する熱のエネルギー利用も規定された。

<廃棄物発生の抑制を最優先>
2012年6月1日に施行された新法は、1994年に施行された「循環経済の促進および廃棄物の環境に適合した処分の確保に関する法律」を改正したもので、名称は「循環経済法」となった。

新法は、リサイクルの準備段階とリサイクル以外の利用(廃棄物の焼却の際に発生する熱のエネルギー利用など)を明示している。また、廃棄物政策について優先度の高い順に以下の5点を取り上げている。

(1)廃棄物の発生の抑制(フロンガスなど自然環境を損なう物質・材料の使用禁止を含む)
(2)リサイクルの準備(ペットボトルの回収やプラスチック容器などの再利用)
(3)リサイクル(資源の再利用に向け、廃棄物をリサイクル)
(4)エネルギー利用を含めた、その他の利用(例えば、廃棄物を焼却し、発電に役立てる)
(5)廃棄物の処分

また、新法は2020年までに家庭ごみ全体のリサイクル比率を現在の62%から65%に上げることを目標に掲げている。さらに15年からは、再利用が可能な生ごみの完全な分別が義務化される。

建設資材廃棄物のリサイクル比率については、EU全体で現在の50%から70%に引き上げることが目標だが、ドイツでは現段階で90%がリサイクルに充てられている。

<軽金属類なども「資源品」に>
新法は、これまでの黄色のプラスチック容器専用のごみ箱・ごみ袋を廃止し、オレンジ色の資源品ごみ箱またはごみ袋に替えるとしている。従来、リサイクル対象はプラスチックに限定されていたが、フライパンや軽金属類、小型家電なども収集されている。オレンジ色のごみ箱は、04年からベルリン市、ライプチヒ市の一部で設置されている。

連邦環境省によると、現在もなお、再利用が可能な多くの資源ごみが再利用されずに処理されているという。専門家は、新法施行により、1世帯当たり年間約7キロの資源ごみの回収が可能になると期待している。

また、09年には国内で必要な資源のうち約14%がリサイクル業界から生み出された。建設資材が大部分を占めている。建物の取り壊しと道路工事によって、年間約8,000万トンの建設資材廃棄物が出ており、これは国内全体の廃棄物の約6割に当たる。

このほか、12年6月1日以降、危険ごみ収集業者には営業許可の取得、ごみ収集車にも専用の目印を付けることが義務化された。また、国内で廃棄物そのものの発生抑制を求めるプログラムが導入されており、今後、一般企業にも影響を与えるだろうといわれている。

<いたるところに分別回収ごみ箱>
ドイツの資源再利用システムは他国に比べてかなり進んでいるといわれるのは、1990年代に再生可能を意味するマーク(グリューネプンクト)が導入されたことが契機と考えられる。

グリューネプンクトの対象は紙、ガラス、プラスチック容器の3種類で、国内で小売りされているプラスチック容器入りの商品のほとんどにマークがついている。

ガラス廃棄物は色(透明、茶色、その他)ごとに分別・回収されている。グリューネプンクト対象商品には、販売価格に容器収集作業費用が含まれており、購入する時点で消費者が一部を負担する仕組みになっている。色分けされたごみ箱やガラス廃棄物用のコンテナは町中のいたるところに設置されている。

使用済みの乾電池はスーパーに回収ポストがあり、粗大ごみ、特殊ごみ、家電ごみなどは、ごみ回収ステーションに直接持ち込むか、あるいは引き取ってもらうこともできる。また、家庭ごみの3分の1を占める野菜や果物などの生ごみは、バイオマス発電の原料や、堆肥として再利用できるよう、専用コンテナに集められている。

(ハンケル・アンヤ、川幡嘉子、岩井晴美)

(ドイツ)

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