法人税免税期間を最長10年に延長−改正投資インセンティブ法を公布−

(チェコ)

プラハ発

2012年06月25日

「投資インセンティブ法」改正法が6月12日、公布された。これにより、2012年7月12日から、法人税免除期間が従来の最長5年から10年に延長されるほか、製造業に加えて、テクノロジーセンターと戦略サービスセンターも優遇適用対象となる。

<優遇対象にサービス部門を追加>
今回の改正は、内閣が国際競争力トップ20入りを目指して打ち出した「2012〜2020年期国際競争力向上戦略」の一環。効果的なインセンティブによって、チェコ経済の国際競争力を高めるのが狙いだ(2007年7月17日記事参照)。主な改正点は以下のとおり。

(1)優遇措置としての法人税免除の最長期間を、従来の5年間から10年間に延長。

(2)優遇措置適用対象に、テクノロジーセンターの設立・拡大、および戦略サービスセンターの開設・拡大を追加。
テクノロジーセンターは、研究開発(R&D)、製品、テクノロジー、生産過程のイノベーション、ソフトウエアのイノベーションを行う。戦略サービスセンターは、ソフトウエア開発、技術的に高度な機器・システムの修理センター(ハイテク修理センター)(注)、シェアードサービスセンター(経理、財政、人事などアドミニストレーション業務、あるいはマーケティング、IT業務を委託されて行う機関)を指す。

○優遇措置適用基準
【テクノロジーセンター】
・固定資産投資が1,000万チェコ・コルナ(1コルナ=約3.9円)以上で、その50%以上が設備投資。
・新規雇用創出数が40人以上。

【戦略サービスセンター】
・新規雇用創出数が、ソフトウエア開発の場合40人以上、修理センター、シェアードサービスセンターの場合100人以上。
・サービス供給対象が2ヵ国以上。

○優遇措置:製造業に対する優遇措置に準ずる。
・法人税免除:最長10年間免除。
・雇用創出補助金支給:1人当たり5万コルナ(ただし、投資対象地が指定された高失業地域に当たる場合のみ)。
・職業訓練コストに対する補助金支給:コスト総額の25%(ただし、投資対象地が指定された高失業地域に当たる場合のみ)。

(3)「戦略的投資」のカテゴリーを導入。
○適用基準
・製造業:固定資産投資が5億コルナ以上で、その50%以上が設備投資。かつ新規雇用創出数が500人以上。
・テクノロジーセンター:固定資産投資が2億コルナ以上で、その50%以上が設備投資。かつ新規雇用創出数が120人以上。

○優遇措置
前述3点の優遇措置(最長10年間の法人税免除、雇用創出補助金、職業訓練に対する補助金)に加え、
・固定資産取得費用の最大5%を補助金として支給。

(4)製造業への投資について、優遇適用条件としての機械設備への最低投資比率を、従来の60%から50%に引き下げ。

(5)製造業への投資について、平均失業率を25ポイント以上上回る地域への投資案件に関しては、優遇適用条件としての最低投資額を1億コルナから6,000万コルナに引き下げることが定められていたが、この条項を撤廃(ただし、平均失業率を50ポイント以上上回る地域への投資案件については、これまでどおり最低投資額は5,000万コルナ)。

<企業団体は優遇制度の維持・拡大を歓迎>
産業貿易省によると、同法は「例えば大企業の開発試験所や、ソフトウエアセンターなど、高度なテクノロジー、サービスを対象とした企業の誘致を目標としたもの」とされている。

同省外郭団体のチェコインベスト(チェコ投資・ビジネス開発庁)のクシージェク総裁は「最長10年間の法人税免税は、例えばハンガリーが既に実施している。ポーランド、ドイツにもチェコより柔軟性の高い制度があり、チェコのこれまでのインセンティブは、国際競争力を失いつつあった」と指摘。今回の改正が「投資誘致政策の方向転換を図り、チェコが新規投資案件を真に歓迎する国としての姿勢を明確にしている意味で、重要なものだ」と説明している。

投資インセンティブ法は2000年に成立したが、07年の大幅改正によって、10年の法人税免除期間が5年に短縮されるなど優遇措置が削減された。また08年には政府内で、投資優遇措置の全面撤廃も合意されていた。さらに現政権も、投資優遇の制限あるいは完全撤廃を検討した経緯がある。カロウセク財務相(所属政党:TOP09)は、税制の全体的な簡素化を推進しており、その一環として投資優遇を含む税制の例外措置をできるだけ少なくしたいとの意向を明らかにしていた。最終的には、クバ産業貿易相に代表される市民民主党(ODS)の意向を尊重し、優遇維持で妥協した。

優遇制度の維持・拡大に関しては、国内企業団体のチェコ産業連盟も積極的に政府に働き掛けを行っていた。同連盟のハナーク総裁は「特に免税は、投資家の判断に最も影響する重要な優遇措置だ。これを含む投資優遇制度を撤廃すれば、投資流入、および新規雇用機会創設に悪影響を及ぼすことになる」として、今回の改正を歓迎している。

(注)ハイテク修理センターは、技術的に高度な機器、特に事務機器、コンピュータ、電子機器、ラジオ・テレビ・通信機器、光学・測定機器、航空機、列車・トラムの電子・操縦システムの修理を行う。自動車・バス修理、地上交通機関の力学的部分の修理は含まれない。

(中川圭子)

(チェコ)

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