2012年第1四半期GDP成長率、内需に支えられ前年同期比2.0%

(スイス)

ジュネーブ発

2012年06月06日

2012年第1四半期の実質GDP成長率は、前年同期比2.0%、前期比0.7%だった。輸出が後退する一方、内需が堅調だったことで手堅い成長となった。

<建設投資・輸出は不振>
経済省経済事務局(SECO)は5月31日、12年第1四半期の実質GDP成長率について、前年同期比2.0%、前期比0.7%になったと発表した。個人消費(1.8%増、0.6%増)や公共消費(4.1%増、2.0%増)が好調で景気を支えた。また、設備投資(2.3%増、1.5%増)も順調に伸びたが、建設投資(7.6%減、5.0%減)が大幅に落ち込み、総固定資本形成(2.1%減、1.5%減)は不振だった。さらに、財の輸出(0.8%増、1.6%減)も低調だった(表参照)。

スイスの2010年〜12年第1四半期の実質GDP成長率

SECOは建設投資の不振について、2月厳寒期に建設事業がストップしたことを理由に挙げており、夏季に向けて盛り返すとみている。また、財の輸出は、前年から継続している欧州債務危機やスイス・フラン高という不安材料を背景に、時計や医薬品を除くほとんどの輸出産業部門で減少となった。サービスの輸出(0.2%増、2.6%増)は順調だった。

産業部門別にみると、好調だったのは、銀行・保険・不動産・賃貸・情報などのサービス部門(3.7%増、2.3%増)と商業・ホテル・運輸・通信部門(2.8%増、0.9%増)。不振だったのは、鉱工業・電気・ガス・水道部門(0.3%増、1.1%減)、建設部門(1.7%減、0.5%減)だった。

なお、11年の実質GDP成長率についてSECOは、3月に発表された1.9%から2.1%に上方修正した。

<第2四半期以降は鈍化の予想>
最大の経済パートナーのEUで景気回復の兆しがなく、12年にはスイスの経済成長も停滞するというのが11年秋からの大方の見方だった。第1四半期は着実な成長を記録したが、SECOの景気部門チーフ、ブルーノ・パルニサリ氏は、輸出の先行きに対する不透明さを踏まえて、「全体的には好調な印象だが、個々の要素には否定的なものがあり、一様ではない」とコメントしている。また、4月にユーロ圏の公的債務問題が再燃しており、「第2、第3四半期の成長は今回ほどの伸びは期待できない」とした。

スイス国立銀行は、フラン高による輸出産業の競争力低下、投資意欲減退や雇用の悪化といった影響を避けるため、11年9月、1ユーロ=1.20フランを上限とし無制限に介入すると宣言。それ以降、為替水準は安定して推移しているが、プライベート銀行大手ユリウス・ベア銀行のチーフエコノミスト、ヤンウィレム・アケット氏は「スイス経済の好調が続けば、無制限介入について今後は維持が困難になるのではないか」とみている。

(ブリショー雅子)

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