マレーシアとのFTAを締結

(マレーシア、オーストラリア)

シドニー発

2012年06月01日

クレイグ・エマーソン貿易・競争力相は訪問先のマレーシアで5月22日、同国のムスタパ・モハマド国際貿易産業相との間で2国間自由貿易協定(MAFTA)を締結したと発表した。2013年1月の発効を予定している。

<2国間でのFTA締結は6ヵ国目>
オーストラリアはこれまで、5ヵ国1地域(ASEAN)とのFTAが発効している。アジア大洋州とのFTAが主で、シンガポール、タイとの2国間FTAに加え、多国間の包括的自由貿易協定としてASEAN6ヵ国、ニュージーランドとのFTA(AANZFTA)が10年1月に発効している。

MAFTAは、05年4月にマレーシアのアブドラ・バダウィ首相がオーストラリアを訪問した際にジョン・ハワード首相(いずれも当時)と交渉の開始に合意した。第1回交渉は05年5月にクアラルンプールで開催された。06年にはオーストラリア側が、AANZFTAに専念するとして交渉が一時中断されたものの、同FTA調印後の09年8月に再開、以降、12年1月までに11回の交渉が行われている。

MAFTAは、急成長を遂げているアジア地域とオーストラリアの経済の統合を進める、AANZFTAを上回る包括的な自由貿易協定と位置付けられている。

<活発な両国間の貿易>
両国間の貿易はとても活発だ。11年の実績をみると、オーストラリアにとってマレーシアは貿易相手国として10位で、シェアは2.7%。アジアではタイに次いで高く、台湾やインドネシアを上回っている。

貿易収支は、オーストラリア側の40億6750万オーストラリア・ドル(豪ドル、1豪ドル=約77円)の赤字になっており、原油(シェア39.7%)、テレビ受像機(7.6%)、コンピュータ(6.5%)などを輸入する一方、原油(16.9%)、精銅(14.3%)石炭(7.7%)など原材料を主に輸出している(注)。

<マレーシア側は一部の品目で関税を設定>
MAFTAは、関税、原産地証明、投資、特許などの21章を定めている。

このうち、関税は、オーストラリア側がMAFTA発効日から全品目の関税を撤廃する一方、マレーシア側は09〜11年にオーストラリアからの輸入実績ベースで97.6%の品目で関税を撤廃し、17年までに、その割合を99%まで引き上げるとしている。

交渉の過程でオーストラリア側が高い関心を示していたのは、工業品と農産品の関税だ。

工業品のうち、自動車の関税については、部品と排気量2500cc超の新型完成車は、発効後に完全撤廃されることになった。一方、2500cc未満は、13年は15%、14年は10%、15年は5%と段階的に引き下げられ、16年に完全撤廃、これまで導入されていた台数制限は撤廃される。

また、鉄と鋼鉄製品は、全ての関税を20年までに撤廃しなければならない。農産品のうち、コメは23年まで関税30%が維持され、以降、26年まで段階的に引き下げられるものの、23年以降は輸入許可制度に変更される。また、牛乳はこれまでどおり関税割当制度がとられ、割り当てを受けられれば無税となる一方、割り当てを受けない場合には関税は20%となっている。

<ビジネス界は歓迎を表明>
今後、両国内の国内批准手続きが完了した段階でMAFTAは発効することになるが、オーストラリア側の発表では、最も早い開始時期として13年1月1日を予定している。

オーストラリアビジネス評議会(BCA)のジェニファー・ウェスタコット会長は「両国の経済関係は非常に大きな可能性を秘めている。MAFTAの締結により、貿易障壁が低減され、投資環境の改善に向けた取り組みが行われることは喜ばしい。今後もアジア各国で取り組まれている交渉に注目している」と評価した。

オーストラリア産業連盟(AI)のイネス・ウィロックス会長は「自動車の輸出企業は、2016年からの関税撤廃により利益がもたらされる。加工食品は事実上、全ての関税が即時撤廃される。通信や教育といったサービス部門も、潜在的には大きな受益者となる。ほかの東南アジア地域との貿易自由化にも大賛成だ」と指摘した。

(注)オーストラリア産原油は、産油地がマレーシアに近いこともあり、権益やコストの関係でマレーシアで精製されるものが少なくない。

(込山誠一郎、ピーター・ラーイッチ)

(オーストラリア)

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