輸入品の州間ICMS税率、2013年1月から4%に統一

(ブラジル)

サンパウロ発

2012年05月21日

政府は4月26日付官報で、商品流通サービス税(ICMS)に関して、輸入品が国内の州をまたいで取引される際にかかる移出州側の税率を、2013年1月から原則として4%に統一すると発表した。ICMSは各州政府が企業誘致する際の恩典として活用されており、今回の発表が各州の企業誘致策に影響を与える可能性もある。

<統一税率は原則として輸入品に限定>
12年4月26日付官報に公示された決議13/2012号により、輸入品の州間取引にかかるICMSの税率について、これまで州により12%、または7%などとばらばらに設定されていたものが、一律に4%になる。同決議は13年1月1日から施行される。

ICMSは商品の流通に際して課税される州税で、輸入品にも課税されている。州内で生産(輸入を含む)、消費(販売を含む)される商品は、当該州で定められたICMS税率(サンパウロ州は原則18%)で税金を納付する。しかし州外に移出(販売)する、あるいは州外から移入(購入)する取引の場合、商品の移出州と移入州で徴収されるICMSを分配する仕組みがあり、州間ICMS税率の適用を受ける。これまで移出州と移入州が異なる際は、例えば、18%のICMSの税収を両方の州で分配し、その税率は移出州が12%、移入州が6%という配分にしてきた。なお、今回、決議13/2012号で一律化したのは州間取引での移出州側のICMS税率で、原則として対象を輸入品に限定している。

<ICMSの恩典が低減>
これまで州によっては、州内港湾の利用を促すと同時に企業誘致の目的で、企業が輸入する商品に対してICMSの恩典を与えてきた。地元紙によると、輸入品のICMS恩典を採用している州は10州(サンタ・カタリーナ、ペルナンブコ、パラナ、ゴイアス、トカンチンス、マトグロッソ・ド・スル、マラニョン、セルジッペ、エスピリト・サント、アラゴアス)で、各州はそれぞれ異なる恩典策を採用している。

例えば、ペルナンブコ州は、港湾活動インセンティブ計画に基づいて、州内で類似品が製造されていない商品を、州内立地企業が輸入する際、輸入品に対するICMS税率を移出州として受け取る12%から5%に低減、さらに州内のレシフェ港を活用して輸入した場合には4%にしている。また、パラナ州は、輸入品に対するICMS税率を12%としているが、そのうちの75%をみなしクレジットとして認め、支払われる税金の一部を還付している。

このような制度を通じて、サンパウロ州などの大消費地に販売する場合でも、輸入業者はICMS恩典のある州の港を利用して輸入時のICMSコストを引き下げ、商品の競争力を維持してきた。

今回の決議は移出州の税率を4%に固定する結果、移入州に14%が配分されることを意味する。つまり、移出州に立地している企業にとって、州政府からの恩典はこれまでの12%という税負担を軽減する大きなメリットがあったが、これが4%に下がることで、立地場所による恩典のメリットが低減することになる。

<各州のICMS恩典は輸入品優遇との批判も>
各州の投資誘致を目的にしてきたICMSの恩典制度は事実上、輸入業者に対する補助金付与と同じで、国内生産業者との競争で輸入品を著しく有利にし、ルセフ政権で懸案材料とされている「非産業化」を推し進める要因になっているとの指摘もあった。

国内では、既に1970年代から「租税戦争」と呼ばれる各州の投資誘致競争があり、ICMSの減免がその材料に使われてきた。今回の「港湾戦争」は、同じ誘致目的でも、輸入品と国内産品間での争いといった、従来とは異なる特徴を持っている。そのため、国内の雇用を犠牲にして輸入品に恩典を与えるのが良いのか、という議論になっていた。

今回の決議13/2012号の決定に対して、マンテガ財務相は「国家にとって意義ある決定だ」と歓迎している。なお、今回の決議により、エスピリト・サント州、サンタ・カタリーナ州、ゴイアス州の3州が最も影響を受けると報じられている。

(深瀬聡史、紀井寿雄)

(ブラジル)

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