デジタル署名利用で発給書類の持参不要に−輸出競争力強化とFTAの活用(2)−

(タイ)

バンコク発

2012年04月25日

タイの原産地証明書(C/O)発給手続きは、2011年に電子申請システムに移行した。「デジタル署名」システムを使えば、発給必要書類も電子ファイルなどで送信でき、発給当局に必要書類を持参する必要はない。C/O発給時間は約30分に短縮され、利便性が格段に向上した。シリーズ2回目は、C/O発給手続きについて。

<申請電子化で発給時間は30分に>
タイでは、マニュアルでのC/O発給申請は既に廃止され、基本的にすべてウェブサイトを通じた電子申請システムに移行している。商務省外国貿易局(DFT)外国貿易サービス部のアルニー・ファーカオ氏はセミナーで、「C/O発給手続き(インターネットを通じた電子システムと電子署名)」と題して解説した。

C/Oを取得しようとする事業者は、まず最初にDFT発行の「輸出入カード」を取得する。このカードは1枚当たり約15分で作成できる。輸出入カードは、「権限所持者」向けと「委任者」向けの2種類あり、社内で実務担当者が保有する「委任者」カードは、担当者分の複数枚の発行が可能。有効期限はそれぞれ2年間だ。その上で、係官から「パスワード」の通知を受け、同カード裏面のバーコードと9ケタの番号、そしてユーザーネームを使い、農産品・工業製品とに分けて「原産性審査」を行い、タイの原産性を審査、承認を受ける。

次に実際のC/Oの発給手続きに入る。電子申請によるC/O発給手続きは、「通常」のものと、「デジタル署名」(注1)を使うものに分かれている。「通常」の場合、インターネットを通じてC/O取得に必要データを入力・送付、必要書類をDFT関連のC/O発給事務所に提出し、実際のC/O発給を受ける。

一方、「デジタル署名」の場合、輸出者は電子システムでデータを入力するとともに、インボイスや船荷証券(B/L)などの必要書類をPDF形式やXML形式、またはスキャンした画像ファイルなどで添付する。C/O発給事務所では、必要書類を持参して確認を受ける必要はなく、C/Oを受け取るだけになる。

なお、C/O発給を受ける際の必要書類は、a.インボイス(オリジナルまたは複写)、b.船荷証券(B/L)や航空運送状、またはその他運送関係書類、c.農産品の輸出前原産地審査申請書(HS01〜24の農産品の場合)、または工業製品の原産性検査書。

DFTによると、C/O発給時間は電子申請に移行して以降、これまでの約1時間から半分の約30分に短縮されたという。

<C/Oの紛失・盗難の際には再発給も>
発行を受けたC/Oが、紛失・盗難または破損した場合、C/Oが期限内なら輸出者はDFTで再発給を要請できる。その際提出する書類は、仮に盗難にあった場合は、a.盗難にあった旨の連絡文書、b.警察署からの盗難届などの文書(C/Oがタイ国内で盗難により逸失した場合)、または輸出者からの盗難にあった旨の通知文書(C/Oが輸出先で盗難により逸失した場合)、c.C/O発給関連書類(C/Oコピー、インボイス、運送状などの写し)。紛失・盗難または破損が認められた場合、DFTはC/O12欄(発行機関欄)に「Certified True Copy(真正な写しであることを認定する)」とスタンプを押し、再発給する。

また、ASEANの枠組みの下で実施している自由貿易協定(FTA)では、連続するC/O(Back to Back C/O)(注2)が発給できる。発給に必要な書類は、a.最初の国が発給したC/O、b.最初の国からの供給者からのインボイス、c.輸出入両方でのB/Lまたはその他の運送状、d.輸出者インボイス。

商務省によると、この連続するC/Oを実際に利用している企業が少なからずあり、自動車部品企業を含め既に複数の企業がこの制度を利用しているという。タイには自動車分野を中心に物流センター機能を置く企業もあり、タイで連続するC/Oの利用も一般的になりつつあるようだ。

(注1)「デジタル署名」を希望する事業者は、同システムに参加する旨の申請書をDFTに提出。DFTは参加希望事業者のユーザー名と輸出入カード番号を部局内システム開発担当に通知、運用テストを実施する。申請事業者はDFTのウェブサイトから必要なシステムプログラムをダウンロードした上で、通信会社のTOTまたはCATから「デジタル証明書」を取得する。既に事業者が、タイ税関のペーパーレスシステムに参加し、「デジタル証明書」を持っている場合、同証明書をそのまま使用できる。テスト運用で問題がなければ、事業者はDFTウェブサイトを通じてデジタル署名(またはXMLデジタル署名)使用登録を行った上で、DFTの審査・承認のため必要事項がすべて記入された申請書を印刷し、DFTに送付する。
(注2)商流、物流ともに第三国経由で行われる取引形態。例えば、自動車部品をフィリピンからASEAN域内にASEAN自由貿易地域(AFTA)を使って輸出する場合、当該製品がいったんタイの物流倉庫に保管され、ASEAN各国側の発注に応じて在庫を切り分けて輸出する際に、原産地証明書(フォームD)も、フィリピン政府発行のオリジナルの原産地証明書を基にタイ商務省が分割して発行することで、ASEAN輸入国側で特恵関税を享受できる。

(助川成也)

(タイ)

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