駐在員雇用パスの最低払込資本金要件を引き上げ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2012年04月16日

通常2年以上滞在する駐在員が取得する就労ビザ「雇用パス(Employment Pass)」の取得要件が、1月から厳格化された。外資が入っている企業(合弁会社を含む)が、マネジング・ディレクターなどの重要ポストにある外国人の雇用パスを申請する場合、外資保有分だけで50万リンギ(1リンギ=約26.5円)の最低払込資本金が必要になる。合弁事業を実施している企業は、現在の払込資本金によっては増資の必要がある。

<小規模事業者は増資の必要も>
雇用パスは、通常2年以上滞在する駐在員が取得する就労ビザで、マレーシアの雇用主(マレーシアで法人化された子会社、マレーシアで登録された外国企業の支店、マレーシアの駐在員事務所)に雇用される管理職・専門職の外国人に発給される。マレーシアで事業を行うにあたり、日本人駐在員が一般的に取得しているビザだ。

雇用パスの取得には、最低月額給与(5,000リンギ)、雇用契約機関(最低2年)、最低払込資本金などの要件がある。また審査では、企業の資本金と株主構成、事業内容、マレーシア人の採用状況、事業内容に対するポストの重要性、申請者の給与、年齢、経験などが考慮される。

今回厳格化されたのは、下記の(5)の最低払込資本金条件。新ルールは次のとおり。

○最低払込資本金
(1)100%ローカル資本:25万リンギ
(2)ローカルと外資の合弁:35万リンギ
(3)100%外資:50万リンギ
(4)流通・サービス取引を行う企業と外国人が所有するレストラン:100万リンギ
(5)外資が参入している企業(合弁会社を含む)でマネジング・ディレクターなどの重要ポストを占める外国人の雇用パスを申請する場合:外資保有分50万リンギ

これまで(2)のローカルと外資の合弁の場合は、35万リンギの資本金要件を満たせばよかった。しかし、新ルールでは、マネジング・ディレクターなどの重要ポストにある外国人の雇用パスを申請する場合は、外資保有分だけで50万リンギの資本金要件を満たす必要がある。

日系企業は、通常トップが日本人のケースが多く、今回の改正により、駐在員の雇用パス取得・更新の際に、増資しなければならない企業も増えると思われる。資本金が少ない小規模事業者にとっては厳しい要件だ。実際に影響を受けた日系中小企業の代表は「今回の改正で増資が必要になった。しかし、ライセンスの関係で合弁相手との出資比率を維持する必要もあり、外資保有分だけで50万リンギの増資は容易ではない」と話し、対応に苦慮している。

(手島恵美)

(マレーシア)

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