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韓国企業は価格重視で中間層に買いやすく−新興市場をいかに開拓するか(2)−

(インド、韓国、南アフリカ共和国)

海外調査部

2012年04月13日

「BOP・ボリュームゾーン市場セミナー」報告の後編は、韓国企業の新興国市場開拓戦略について。韓国企業は中間層をターゲットに低価格製品を提供し、アフターサービスに力を入れている。

<1960〜80年代高成長時代のノウハウを売り込む>
まず「韓国のODA政策と韓国企業の海外CSR政策」と題して、ジェトロ海外調査部の百本和弘主査が次のように報告した。

韓国の対外直接投資を地域別にみると、多いのは中国を含むアジア向け、次いで北米、欧州の順だ。海外には約5万社が進出しており、中国には日本とほぼ同数の2万社が出ている。インドは進出先として17位で、アフリカへの進出はまだ限定的だ。

ODAについては、韓国は2010年10月にOECDの開発援助委員会(DAC)に加盟し、援助を受ける側から援助する側に変わったばかり。ODAの金額は右肩上がりに増加している。援助額のGDP比でいうと、現状のままでは日本は韓国に追い抜かれてしまう。韓国政府のODAのビジョンは、差別化を意識している。セールスポイントは、1960〜80年代の高成長時代のノウハウを売り込むことだ。民間企業とのウィン・ウィンの関係の構築、企業の社会的責任(CSR)も考慮している。

韓国は、開発途上国に韓国式援助モデルのKSP(Knowledge Sharing Program)を実施中で、このプログラムに従い、輸出入銀行の設立やマクロ経済モデルの策定などを指導している。また、かつての農村近代化運動「セマウル(新しい村)運動」のODA版を推進していくことを発表している。

韓国企業のCSRの活動はある程度定着してきており、寄付文化が根付いてきた。CSR活動費は売上高比0.24%で、日本より高い。海外でのCSRはまだ限定的だ。韓国国内での問題は、朝鮮戦争当時、皆が貧しかったときに政府と結び付いた勢力がその後財閥として発展したという意識を背景に、大企業が恵まれない人に寄付をするのは当然で、国内でのCSRがまだ不十分なのになぜ海外か、という批判が常にあることだ。

CSR活動を活発に行っている企業は、ポスコ(旧浦項総合製鉄)とサムスン。ポスコは国内では人材の育成、国際結婚した女性の支援、脱北者支援などを行っており、海外ではアフリカの農村開発支援などを実施している。海外での活動は経済的自立への支援で、ビジネスには直接結び付かない。

サムスンはグループ内に、CSR活動を行う「サムスン社会奉仕団」を設けている。この奉仕団は、海外で成果が期待できる国、サムスン電子の拠点のある国で活動している。既に現地化が進み、現地の事情に合わせた活動を行っている。アフリカでは、愛されるサムスン・ブランドの確立を目指しており、エンジニアリング、インターネットなどのスクールを開設、本業にも貢献する活動を行っている。

<サムスン電子は南アに焦点>
次いで、ジェトロ海外調査部の大木博己主任調査研究員が「韓国企業のアフリカ戦略:南アフリカにおけるサムスン電子」と題して、以下のように講演した。

サムスン電子は、将来的にはアフリカ市場での売り上げを100億ドルにしたいという考えで、CSR活動を実施。アフリカ市場で攻勢に出ており、ナイロビ市内ではサッカーで活躍しているアフリカ出身のドログバ選手を使ったスマートフォンの看板が目に付いた。

韓国とアフリカの関係は、2006年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領、11年には李明博(イ・ミョンバク)大統領が訪問するなど首脳外交が活発だ。しかし、韓国企業にとって、アフリカ進出はまだ初期段階で、レアアースの産地、原子力発電や消費財などのマーケットとしてとらえているが、中国に比べると進出は遅れている。

サムスン電子は、南アフリカ共和国をアフリカ最大の市場と位置付け、中間層からBOP(経済ピラミッドの底辺)層まで、すべての層をターゲットにしている。転換点になったのは09年。アフリカ本部をドバイからヨハネスブルクに移転し、「ブルー・エデュケーション・プログラム」というCSR活動に乗り出した。このプログラムは、電子エンジニア・アカデミー、太陽光発電インターネット・スクール、モバイル・エデュケーションの3つから構成されている。

サムスンのCSRの狙いは、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などをアフリカ向けに開発すること、若者の間にブランド忠誠心を育てることだ。さらに、ネルソン・マンデラ財団との関係も構築している。

<手ごろな価格で修理サービスが迅速>
最後に「インド・ボリュームゾーン市場における韓国企業の成功の秘訣(ひけつ)」と題し、ジェトロ・ソウル事務所の崔喜楽(チェ・ヒラク)職員が講演した。11年9月の現地での調査を基にしたもので、韓国側の考え方、方向性を以下のように紹介した。

インド人からみた日韓製品の違いは、日本製品はイメージがよく高品質だが、故障の際のサービスが劣るのに対し、韓国製品は手ごろな価格にもかかわらず、故障した場合のサービスが優れているというものだ。

インドの中間層は年収20万〜100万ルピー、日本円で32万円〜160万円の人々で、韓国企業はこの層をターゲットにしている。インド人は品質にこだわらない。これは生活インフラ環境が悪いため、どうせいつかは壊れる、という意識を持っているためだ。従って韓国企業は故障への取り組みに力を入れている。サムスン電子、LGエレクトロニクスなどは全国に600店以上の代理店を設け、修理への対応は速やかだ。

韓国企業は、人事、組織、営業などすべてを現地化する努力をしている。組織管理でも現地で判断し、現地から提案することにしており、本社はサポート役に回っている。価格・品質では、品質よりも価格を重視し、現地調達により、低機能でも中間層が購入しやすくしている。

人事では、駐在員も現地人の管理下に置かれることもある。駐在員は本社より良い条件で勤務でき、また現地で子弟がインターナショナルスクールに通学できるのが韓国人にとってメリットになっている。帰国後の大学入試では帰国子女特別枠が使える(2012年2月23日記事参照)

投資方針は、アグレッシブな投資で一気にトップに上ることを重視し、それから安定した収益を求める。一定以上のシェアを獲得することを優先し、それまでは収益がゼロであってもいいとされる。

政府、公的機関の支援ではODAがないため、それを利用できる日本企業をうらやんでいる。ODAを供与できるということはいいイメージを与える。

(新井俊三)

(韓国・南アフリカ共和国・インド)

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