13年以降の自動車のIPI税規則を発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2012年04月13日

政府は4月3日、2013年以降の自動車の工業製品税(IPI)規則を発表した。現在は、域内調達率65%などの要件を満たさない自動車メーカーに対して12年末まで、最大30ポイントのIPI税率引き上げという暫定措置を取っている。今回の発表によると、13年以降も国内に拠点を置かない自動車メーカーには、厳しい措置が継続される。

<域内調達率に応じてIPIを減額>
自動車にかかるIPIは、11年12月から12年12月末まで、規定税率から30ポイント引き上げられていた。新規則は13年1月以降の措置を定めており、12年4月3日付法令7,716号により、現地調達率の引き上げや技術開発投資などを条件に、引き上げられたIPI税率の減額措置を定めた。制度の名称は「自動車産業にかかわるイノベーション・科学技術・すそ野産業振興プログラム(INOVAR−AUTO)」。

新たな制度では、進出自動車メーカーは既存、新規参入にかかわらず、30ポイントを上限に、ブラジル国内または南米南部共同市場(メルコスール)域内で製造された部品、原材料、製造にかかわる機器の調達額に応じて、減額措置(IPIの税クレジット)を受けられる。また、科学技術分野での研究開発投資を行った企業は、さらに2ポイントの減額措置を受けられる。従ってIPIの減額措置は、最大で32ポイントになる。

11年12月から適用されてきた現行規則では、65%の域内調達率などの要件をクリアして政府の承認を受けていれば、30ポイントの引き上げ免除が自動的に行われる方式になっている。65%の域内調達率の分子には、広告費や人件費など製造に直接かかわらない費目も含まれている。新規則ではそれを排除し、しかも域内調達率に応じて最大30ポイントの範囲内で減免の幅が決まることになる。

新規則に適合するためには、既に進出している企業は以下の4つの要件のうち3つを満たす必要がある。その条件とは、a.研究開発・イノベーションへの投資、b.エンジニアリング、基礎工業技術への投資、c.国内での製造工程の履行、d.国家度量衝・規格・工業品質院(INMETRO)による省エネ・ラベリングへの対応(表参照)。

新たなIPI軽減措置の承認を受けるための要件

<新規進出メーカーには一部要件を緩和>
新規にブラジルに進出する企業の場合は、政府に新車種の製造に関する投資計画を提出し、それを履行することでIPI軽減措置を受けられる。工場を建設している期間に輸入された自動車にかかるIPIについて、当初は30ポイント引き上げ後のIPIを支払う必要があるものの、これをクレジットとして受け取れる。このクレジットは、政府に提出された投資計画で製造されるべき自動車の50%(つまり年産10万台の工場を予定していたのであれば、クレジットが認められる範囲の輸入台数は5万台)を限度に認められる。ただし設立された工場が稼働しなければこのクレジットは利用できない。

また既に投資を実行し、工場立ち上げの初期段階にあるメーカーについては、既存メーカーが履行すべき要件の60%履行からスタートできるものの、3年間で100%の履行を求められる。ピメンテル開発商工相は「ブラジル市場に参入したばかりの企業に対して、ブラジルで30年の歴史を持つ企業と同じレベルの効率性を求めることはできない」と述べている。これらの事例に該当するのは、主に中国の江淮(JAC)や奇瑞(Chery)などの中国勢、そして新規に工場を単独で立ち上げようとしている韓国の現代とみられる。

開発商工省は12年1月、現行制度でIPIの30ポイント引き上げ措置を免除するメーカーを承認している。アグラレ、CAOA(現代)、フィアット、フォード、ゼネラル・モーターズ、ホンダ、イベコ、マン、メルセデス・ベンツ、MMCB(三菱)、日産、プジョー、ルノー、スカニア、トヨタ、フォルクスワーゲン、ボルボ、インターナショナルの18社で、いずれも既存の工場が国内にあるメーカーだ。しかしこれらの企業が13年以降もIPIの引き上げ措置免除を受けるには、新制度への適合が必要だ。

報道によると、既に進出している日系メーカーも現地調達率の引き上げを模索するなど、現地自動車部品企業からの調達を奨励しようとする政府の動きに対応しようとしているようだ。

(紀井寿雄、二宮康史)

(ブラジル)

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