米国がアルゼンチン向け一般特恵関税制度を廃止

(米国、アルゼンチン)

サンパウロ発

2012年03月30日

米国政府は3月26日、アルゼンチンから輸入する特定商品への関税優遇措置である一般特恵関税制度(GSP)を廃止すると発表した。発表から60日後に施行予定。その影響は年間1,800万ドル程度と限定的だが、政治的には重い意味を持ったものだとの見方がある。

<年間1,800万ドルの影響と分析>
オバマ大統領は3月26日、アルゼンチンから輸入する特定商品へのGSPを廃止すると発表した。今回の決定は、アルゼンチン政府が2005年と06年に世界銀行グループの国際投資紛争解決センター(ICSID)で言い渡された、米国企業AzurixとBlue Ridge Investmentへの損害賠償金(約3億ドル)を支払っていないためだ。

11年のアルゼンチンから米国への輸出額は約42億ドルで、GSPの恩恵を受けていたのは、そのうちの11%に当たる約4億7,700万ドル。発表の60日後に施行されるGSP廃止により、新たに3〜5%の関税が課されることになる。引き上げの対象になるのは、ワイン、保存用処理肉、植物油、グリセリン、アルミ関連製品など。ジョルジ産業相は、GSPの廃止によって、年間1,800万ドルの影響を受けると説明した。

アルゼンチン政府関係者は、年間1,800万ドル程度の影響で両国関係には大きく影響しないと冷静さを保つよう努める一方で、ティメルマン外相は、今回の決定は不可解だと発言している。また、アルグエジョ駐米大使は、アルゼンチン政府は賠償金を支払わないとの意向は示しておらず、同国の法律に基づいて支払うことを米国企業側が受け入れなかった、と主張している。

現地報道によると、アルゼンチン政府は、非公式に05年と10年の債務返済と同じ条件で、元本価値を70%削減した上で支払うことを提案していた。

<政府よりも危機感が強い産業界>
アルゼンチン工業連盟(UIA)は3月27日、同措置にかかわる国内企業や地方経済への影響を分析したところ、その影響は政府の見通しよりも大きいと公表した。例えば、UIAはGSPの廃止による影響は2,400万ドル以上になるとみている。また、優遇措置がなくなれば、アルゼンチン製品がほかの国の製品と比べて競争力を失うと懸念しており、中でもワイン産業や化学産業への影響が大きいとみている。

政府は、12年の貿易黒字100億ドル達成を至上命題にしているという。そのためには、輸出を拡大させる必要があり、12年に入ってから厳しさを増している輸入規制もこの貿易収支目標達成への動きとされる。そのような環境下で、今回の米国の決定は、目標達成にも影響を与えることになるという指摘もある。

(紀井寿雄、シルビア・ヤマキ)

(アルゼンチン・米国)

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