トルコとのFTA交渉妥結を宣言−上半期中に正式署名へ−

(韓国、トルコ)

ソウル発

2012年03月29日

3月26日にソウルで開催された核安全保障サミットに合わせ、韓国・トルコ首脳会談が行われた。外交通商部は、首脳会談で両国の自由貿易協定(FTA)の枠組み協定、物品貿易協定が妥結し、仮署名したと発表した。2012年上半期内に正式署名の予定。主要メディアは自動車、鉄鋼などを中心に、対トルコ輸出が増加すると肯定的に評価している。

<すべての工業製品の関税を7年以内に撤廃>
韓国・トルコFTAは枠組み協定、物品貿易協定、サービス・投資協定、その他の協定の4分野で構成されており、今回妥結したのは枠組み協定と物品貿易協定(2012年3月13日記事参照)

韓国・外交通商部の発表によると、物品貿易については以下のとおり。

工業製品は、両国ともにすべての品目の関税を7年以内に撤廃する(表1、2参照、注)。とりわけ、韓国にとってメリットが大きいとされる自動車関連では、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの1600cc以下の小型乗用車のトルコ側の関税が、7年非均等撤廃(7年間で関税を段階的に撤廃するが、FTA発効初期の段階で関税を大きく削減する方式)になった。

表1工業製品の譲許状況
表2韓国・トルコの工業製品譲許類型別主要品目

<農産品は53%の品目の関税を10年以内に撤廃>
農産品では、両国とも約53%(品目数基準)の品目の関税を、10年以内に撤廃する(表3、4参照)。韓国の農業分野で特に影響が大きいコメとコメ関連製品の16品目については、協定上のすべての義務を受けない「譲許除外品目」としたほか、牛肉、鶏肉、唐辛子、ニンニクなど599品目は、協定発効後も現行関税率を維持する。一方、トルコは「譲許除外品目」は設けなかったが、混合ジュース、パイナップル、サクランボ、アンズなどは協定発効後も現行関税率を維持する。

また、韓国が関税を即時撤廃する農産物・食品類は、パスタ、干しぶどう、オリーブ油、天日塩など194品目、トルコが関税を即時撤廃する農水産物・食品類は、インスタントコーヒー、たばこ(完成品)、ラーメン、焼酎、ビール、キムチなど479品目。

表3農水産品の譲許状況
表4韓国・トルコの農水産物譲許類型別主要品目

<サービス・投資、政府調達分野はFTA発効から1年以内の妥結目指す>
外交通商部は、韓国とトルコ両国は12年上半期中に正式署名を行い、早期に協定を発効させることで相互に合意したと発表した。サービス・投資と政府調達分野については、同FTAの発効から1年以内の交渉妥結を目指す。

また、トルコとのFTAの意義として、トルコは7,370万人の人口と高い経済成長率(10年8.9%)の市場であること、欧州と中東、アフリカをつなぐ戦略的な要地にあること、輸出が持続的に増加していること、を挙げた。

影響が予想される農産物分野では、トルコからの輸入額が44億ドルとさほど多くなく(07〜09年の平均)、最近5年間に牛肉や豚肉などのセンシティブな品目の輸入がないため、国内産業への影響は限定的だと説明した。

<自動車の輸出増加を期待>
当地の主要メディアはFTA妥結について、工業製品を中心に韓国企業の輸出増加が期待できるとし、肯定的に報道している。

また、大半のメディアは、FTA発効で最も大きな利益を得ると予想される分野は自動車分野だとみている。11年の韓国のトルコ向け自動車輸出額は6億7,000万ドルで、トルコの輸入自動車市場全体の7.8%を占めた。今後、価格競争力向上により、そのシェアが拡大すると予想される。

(注)トルコはEUと関税同盟を結んでいる。関税同盟の対象は工業製品(石炭、鉄鋼を除く)で、農産品(HS1-24類)は除かれている。従って、工業製品には対外共通関税を適用する必要がある。11年7月に暫定発効したEU・韓国FTAで工業製品の関税が全廃(EU側は発効後5年以内、韓国側は同7年以内)されるため、韓国・トルコFTAでも工業製品の関税は最終的には全廃される。

〔崔喜楽(チェ・ヒラク)〕

(韓国・トルコ)

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