退職積立基金の雇用主法定拠出率を1ポイント引き上げ−月収5,000リンギ以下の従業員が対象−

(マレーシア)

クアラルンプール発

2012年03月07日

日本の年金制度に相当する従業員積立基金(EPF)の雇用主負担の法定拠出率がこれまでの12%から13%に1ポイント引き上げられた。引き上げは、月収5,000リンギ(1リンギ=約27円)以下の従業員が対象。2月の拠出分(1月の給与分)から適用されている。EPF加入者の93.48%が、月収5,000リンギ以下に相当するため、影響は広範で、雇用主負担が増加することになる。

<55〜75歳は0.5ポイント引き上げ>
EPFは、払い込んだ額に利子を加えた額を55歳以降、預貯金のように自由に引き出せる。退職者の約7割は、10年程度で使い切ってしまうという。 払い込みは、雇用主と従業員の双方に義務付けられており、雇用主が従業員の月額給与の最低12%(旧率)、従業員が月額給与の最低8%を毎月払い込むシステムで、54歳時点での払込額は、1人当たり平均14万6,000リンギとなっている。

今回の改正で雇用主のEPF法定拠出率は、55歳未満の従業員は給与の12%から13%へと1ポイント引き上げ、55〜75歳までの従業員は6%から6.5%へと0.5ポイント引き上げられる。月収5,000リンギ以下の従業員が対象で、1月の給与分(2月の拠出用)から適用されている(表1参照)。

表1雇用主のEPF法定拠出率

拠出率は、最低限課される率で、実際にはそれ以上拠出している企業もある。現在の拠出率が新たな法定拠出率を上回る場合、雇用主は現在の拠出率を維持できる。ただし、雇用主が法定拠出率に上乗せして拠出することが雇用条件で定められている場合、新しい拠出率は上乗せした拠出率プラス1ポイントとなる。

「給与」の定義は、1991年EPF法第2条で、「従業員が役務契約または実習・研修契約に基づき、月払い・週払い・日払いなどで合意した金銭報酬で、これには雇用者から被雇用者に支払われる賞与、手数料または手当が含まれる」とされている。

<EPF加入者の93%が対象>
現在のEPF加入者は約600万人。今回の引き上げ率はわずかで、所得条件が設けられているため限定的措置にみえるが、EPF加入者の93.48%は5,000リンギ以下のため、ほとんどの加入者が引き上げの対象になる(表2参照)。また引き上げられたのは雇用主負担分で、雇用主に負荷がかかる制度変更になっている。従業員の法定拠出率は、55歳未満は11%、55〜75歳は5.5%で変更はない。

表2EPF加入者の所得分布

政府は、今回の雇用主による拠出率引き上げの狙いについて、EPFへの払込額が少ない低所得者層などが定年退職後数年間でEPFを使い切ってしまい、定年後の生活が苦しくなっている問題を解決したいためだ、としている。平均寿命は男性が73歳、女性が76歳と高齢化が進み、払い込んだEPFだけでは、老後に十分な生活費が得られないという問題が生じており、政府は拠出率を増やすことで、少しでも貯蓄額を増加させようとしている。

(手島恵美)

(マレーシア)

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