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経済制裁を一部緩和、ビジネス界の関心急上昇

(ミャンマー、米国)

ニューヨーク発

2012年02月28日

政府は2月6日、対ミャンマー経済制裁措置の一部を緩和した。今回の緩和措置の直接的な影響は限定的とみられるが、ビジネス界ではミャンマーへの関心が急速に高まっている。本格的な制裁解除を見据え、水面下での動きは既に始まっているとみる向きもある。

<IFIを通じた支援が可能に>
今回緩和されたのは、人身売買防止法(TVPA、注1)に基づく、国際金融機関(IFI)を通じた米国の経済制裁措置だ。これまでは同法に基づき、IFIによるミャンマー向け融資や、技術支援、評価ミッションの派遣に対し、米国は反対の意思表明をするとされていたが、今後はIFIを通じた支援に加わることが可能になる。

緩和措置を講じた背景としてクリントン国務長官は、2011年3月のテイン・セイン政権誕生後、政治犯の釈放、メディア統制の緩和、労働者の権利保護や国民の政治参加を促す動き、政府与党とアウン・サン・スー・チー氏との対話の開始など、政治面・経済面双方で開放や民主化に向けた動きが進展していることを挙げている。さらに緩和措置を講ずることで、ミャンマーの改革・民主化を加速させ、貧困削減をもたらし、ひいては米国自身の国益にもつながるとしている。

<緩和措置の直接の効果は限定的>
他方、今回緩和された措置は数多くある制裁措置のごく一部でしかなく、直接的な効果は限定的とみられる。

政府はミャンマーに対し、数々の経済制裁を科しており、主なものだけでも、ミャンマー政府高官や与党連邦連帯開発党(USDP)の幹部および幹部経験者、軍関係者に対する米国入国ビザの発給停止、同国向け新規投資の禁止、ミャンマー製品の輸入禁止、同国向けの送金や金融サービス提供の禁止、軍事政権関係者の資産凍結などがある(表1参照)。また人身売買防止法と同様の措置として、児童兵士の撲滅に関する法律や、外国援助法および外交授権法でも、国際機関からの同国向け援助に米国が反対意見を提出することや、援助に参加しないことが盛り込まれている。

そのほか、マネーロンダリング防止に関連して、ミャンマーのメイフラワー銀行、アジア・ウェルス銀行(注2)および政府系銀行を、「マネーロンダリングに関与する懸念のある銀行」に指定し、米国の金融機関がこれらの銀行と金融取引を行うことを禁じている。

表1米国による主な対ミャンマー経済制裁の内容

この結果、米国とミャンマーの経済交流は、米国からのわずかな輸出を除けば、現在ではほとんど行われていない(図参照)。11年時点の米国からのミャンマー向け輸出額は4,884万ドルで、電気機器や、光学機器、医療機器、精密機器などの機械機器類が約5割を占めるほか、穀物や酪農製品などが3割超となっている(表2参照)。輸入については、制裁発動時の03年の輸入品目のうち、約8割が衣類だったが、その後の実績はほとんどないに等しい状況になっている(注3)。

ミャンマー向け直接投資の具体的な数値は明らかではないが、鉱業や小売り、専門サービスなどでの投資実績がある(注4)。また、報道によると、1997年に新規投資の禁止措置が講じられる前後から、ペプシコ、リーバイ・ストラウス、アップルなどの企業が撤退を余儀なくされたという(「ウォールストリート・ジャーナル」紙11年11月30日)。

米国の対ミャンマー貿易の推移
表2米国の対ミャンマー貿易の上位10品目

<水面下で動き出す米企業>
今回の制裁緩和は、その直接的な効果は限られるものの、今後の経済制裁解除に向けた期待が生まれており、特にビジネス界ではミャンマーを新たなフロンティアとみて、投資機会をうかがう機運が高まりつつある。

「ウォールストリート・ジャーナル」紙(11年11月30日)は、投資を前向きに検討している欧米企業として、キャタピラー、ユニリーバを挙げ、キャタピラーに関しては、11年8月に関係者を通じて政府高官と接触、エンジンと重機の販売についての会合がもたれたとの情報を伝えている。これに関し、キャタピラーのスポークスマンは情報の真偽についてはコメントしなかったものの、「当社は現行の法規制をすべて順守している。キャタピラーとその外国子会社は、ミャンマーには販売子会社を持っていないが、一定の条件の下で当社製品を販売できる」としている。

ロイター(12年1月11日)によると、2月中にもビジネス界の主要幹部で構成されるビジネス・ミッションがミャンマーに派遣されるとしており、参加者にマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏などが取り沙汰されている(本人は否定)。具体的なビジネスの着手について、公式に表明した企業は見当たらないものの、ヤンゴンからの情報によると、米国大手アパレルメーカーが3月上旬にミャンマーの業界団体を訪問する予定になっているなど、既に水面下での動きは始まっているようだ。政府の経済制裁解除に向けた動きと併せ、解除後を見据えた米国企業の動向が注目される。

(注1)TVPAは、一定の基準に基づき、人身売買の防止措置を取っていない国を3段階に分類している。具体的には、以下のとおり。
○人身売買の防止に関し、TVPAが要求する最低限の措置を講じている国(Tier 1)
○TVPAが要求する措置を十分には講じていないが、顕著な努力が認められる国(Tier 2)
○TVPAが要求する措置を講じず、改善に向けた努力もしていない国(Tier 3)
TVPAは、Tier 3に分類される国に対し、援助の停止(人道目的、または貿易関連目的を除く)、教育・文化交流プログラムへの政府職員の参加の禁止、国際金融機関による支援(人道目的、貿易関連目的を除く)への反対などが含まれる。ミャンマーは北朝鮮やリビアなど22ヵ国と同様にTier 3に属していた。
(注2)メイフラワー銀行、アジア・ウェルス銀行の2行は、03年2月の取り付け騒ぎの後、清算した。
(注3)05年、06年には特殊品目(HS98)で、それぞれ6万1,500ドル、9,023ドルの輸入が計上されているが、これは一度米国からミャンマーに輸出された後に米国に戻された米国製品で、実質的にはミャンマーからの輸入ではない。また09年には自動車部品(ボディーを構成するもの)が8万5,916ドル輸入されているが、詳細は不明。
(注4)03年末時点の米国の対外直接投資残高統計では、ミャンマー向けの投資残高は、専門・科学・技術サービスで100万ドルが計上されているほか、鉱業(金額は非開示)、小売りセクターで50万ドル未満の残高が報告されている(総額は非開示)。なお、トムソン・ロイターが公表するM&Aデータによると、93年2月に石油大手のユノカルがフランスのトタルから、ミャンマーの海底油田権益の47.5%を取得した実績がある。

(東野大)

(米国・ミャンマー)

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