建材・内装材の揮発性有害物質のラベル表示を義務化

(フランス)

パリ発

2012年01月18日

政府は、建材や内装材の揮発性有害物質の排出に関するラベル表示の義務化を2012年1月1日から開始した。ホルムアルデヒドやトルエンなどシックハウス症候群の原因になる有害物質を、汚染レベルの低いA+からCまで4段階に分けて表示する。対象になるのは新たに市場に投入される製品で、既に市場に出回っている製品については13年9月1日から適用される。

<ラベルにフランス語を付記>
強制表示の対象になる製品は、建材、床・壁・天井材、断熱材、扉・窓材、ペンキ、ニスなど。11年4月19日のアレテ(行政命令)によりクラス分け基準が規定され、12年1月1日から市場投入する製品に、基準に従って製造者が自己申告で表示する(図、表参照)。

カラーまたは白黒のラベル表示に加え、ラベルの下にフランス語で「Information sur le niveau d'emission de substances volatiles dans l'air interieur, presentant un risque de toxicite par inhalation, sur une echelle de classe allant de A+ (tres faibles emissions) a C (fortes emissions)」〔吸入毒性の危険度を表すA+(非常に少ない排出)からC(多い排出)にクラス分けした室内の空気中の揮発性物質の排出レベルに関する情報〕と付記する必要がある。

揮発性有害物質の排出に関するラベル表示
排出濃度によるクラス分けの基準

ラベル表示により情報を伝達することで、例えば新築や購入の際、消費者は子ども部屋など使用目的に応じて室内の空気の質を考慮して材料を決定できる。その結果、汚染物質の排出の少ない製品の価値上昇、最終的に市場の製品全体の質の向上につながる。

<一般消費財にもラベル表示を拡大へ>
室内の空気汚染に関するラベル表示は、「グルネル環境会議(注1)での提言を実行するための行動計画法(通称「グルネル第1法」)」(09年8月に発効)と、第2次健康・環境全国計画に基づいている。グルネル第1法の第40条で、a.12年1月1日から建材、家具、壁・床材、ペンキ、ニスなどの揮発性汚染物質排出のラベル表示の義務化、b.発がん性、変異原性、生殖毒性(CMR)のカテゴリー1と2に特定されている危険物質の使用禁止、c.洗剤など室内の空気汚染の原因になる消費財への措置の拡大の必要性に関する調査の発表、を規定している。

CMRカテゴリー1、2に特定されているトリクロロエチレン、ベンゼン、2種類のフタル酸エステルは、09年5月28日のアレテにより、既に10年1月1日以降の上市(注2)が禁止されており、そのほかの物質は09年6月1日からEUの新化学物質規則(REACH)の規制に従うことになった。

エコロジー・持続可能な開発・運輸住宅問題省による「一般消費財の措置拡大の必要性に関する調査」では、洗剤、脱臭剤、テレビ、オーディオ・ビデオ、コンピュータなどの電子機器の汚染物質の排出について調査した結果、脱臭剤は13年、洗剤は14年からラベル表示可能としている。

グルネル第1法によると、家具もラベル表示の対象となっているが、施行令はまだ出ていない。家具の品質保証機関のFCBAによると、エコロジー・持続可能な開発・運輸住宅問題省はFCBAと食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の現在実施中の調査結果を基に結論を出す予定で、12年内のラベル表示義務の導入はないとみている。

(注1)07年7月から約4ヵ月にわたり行われた環境会議の名称。地球温暖化を含む環境問題について環境保全団体、経営者団体、労働組合、国会議員、政府・地方自治体が協議し、向こう5年間に達成すべき目標と具体的な政策提言した。これを受けて政府は、08年に策定した「グルネル環境会議での提言を実行するための行動計画法案(グルネル第1法案)」で環境保全に関する目標を法案化したのに続き、09年1月にこれらの目標を達成するための具体的な規制を定めた「環境国家契約法案(グルネル第2法案)」を策定した。
(注2)EU環境総局の定義によると、「上市(put on the market)」とは、EU域内での流通・使用を目的として、EU市場で初めて製品を利用できるようにする最初の行為で、有償・無償を問わない。

(奥山直子)

(フランス)

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