衛生リスクの低い医療機器の登録手続きを簡素化−1月1日から適用−

(メキシコ)

メキシコ発

2012年01月12日

保健省は2011年12月31日付官報で省令を公布し、衛生リスクが低い医療機器や関連素材の衛生登録手続きを大幅に簡素化した。また、医療関連でないのに用途や原材料などが似通っているため、慣習的に衛生登録されていた製品のリストを公表し、それらの製品には衛生登録も輸入許可も必要ないことを明確にした。適用は12年1月1日から。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<96品目を衛生リスクが低い医療関連素材に>
医療機器や医療関連素材を販売するためには、製品ごとに日本の薬事登録に相当する連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)の「衛生登録」が必要になる。通常、COFEPRISによる医療機器の衛生登録に際しては、定型フォーマットに記入する情報のほか、以下の書類の提出が求められる(以下の書類は、メキシコ製ではなく外国製品であることを想定)。

(1)製品の安全性・機能性を示す科学技術的情報
(2)スペイン語の製品表示の案
(3)取扱説明書、マニュアル(スペイン語)
(4)製造プロセスを説明する資料
(5)構造、素材、部品や機能を説明する資料
(6)製品仕様を証明する研究所の検査証明書
(7)参考書籍・論文(存在する場合)
(8)メキシコ公式規格(NOM)が存在する特定品目についてはNOMが要求する資料
(9)原産国の衛生当局が発行する「自由販売証明書(Certificate of Free Sale)」または同等の証明書
(10)当該製品の輸入販売者がメキシコで外国の製造者を代表することを、製品原産国の法的手続きに基づき公認した書状〔書状がスペイン語以外の言語の場合は、公認通訳(Perito Traductor)によりスペイン語に翻訳される必要がある。メキシコでの輸入業者が外国製造者の子会社の場合、輸入業者の在外工場で製造された製品を輸入する場合は必要ない〕
(11)製品原産国の衛生当局が発行した適性製造規範(GMP)証明書
(12)製品製造者により発行された製品分析証明書のコピー(会社のレターヘッドを用い、品質管理責任者のサインが入っていなければならない)
(13)保健関連素材を扱う事業所(輸入販売者)としての営業通知のコピー
(14)衛生管理責任者の登録書コピー

今回公示された保健省令は、別添1として96品目の医療機器・関連素材を「衛生リスクが低い医療関連素材」として分類し(添付資料の表1参照)、申請書に添付する提出書類の数を大幅に削減した(省令第1条)。

必要な書類は、原則として上記(2)の製品表示案と(13)の営業通知のコピー、衛生登録(新規・更新・変更)にかかる連邦行政手数料の支払いを証明する書類のコピーだけになる。ただし、外国製品の場合は、(10)の書類が必要になる。

「衛生リスクが低い医療関連素材」の衛生登録にかかる法定審査期間は30営業日(省令第2条)で、現行の「保健関連素材に関する規則」第179条で定められたクラスI(従来のリスク分類で最も低リスク)の医療関連素材に対する法定期間と変わらない。

「保健関連素材に関する規則」の第179条は、医療機器のリスク分類(I、II、IIIの3分類、Iが最もリスクが低く、IIIが最もリスクが高い)に応じて法定審査期間を定めており、リスク分類がIの医療機器の審査期間は30営業日、IIは35営業日、IIIは60営業日となっているが、必要提出書類は原則として同じだ。

なお、法定審査期間は申請者から不備のない完全な書類が提出された日の翌日からカウントされ、書類に不備があった場合は、不足する情報が行政的な情報(企業の住所や衛生責任者の情報など)の場合には10営業日以内、技術的な情報の場合には20営業日以内に、COFEPRISが申請者に不備があったことを通知する。

COFEPRISの追加情報要求通知には、通知が届いてから10営業日以内に回答する必要がある。書類不備の通知日から申請者が追加情報をそろえて提出するまでの日数は、法定審査期間のカウントから除かれる。

<日系企業のビジネスへの影響は小さい>
省令別添1に分類される医療機器・関連素材の衛生登録に際して、書類提出負担がかなり軽減されることは間違いない。ただし、別添1に分類される96品目は、ガーゼや包帯、マスク、一部の歯科用器具・素材、リハビリ用機器など非常に限られた品目だ。

日系企業がメキシコで輸入販売する医療機器のほとんどは別添1のリストに掲載されていないため、今回の省令で恩恵を受ける企業は少ないとみられる。関係者は、従来のリスク分類でクラスIに分類されていた血圧計など、身体の内部に入らず、傷ついた皮膚に触れることもない医療機器や関連素材の多くが対象となり、別添1のリストに掲載されることを期待していたが、結果的には非常に限られた品目しか対象にならなかった。

しかし、省令第6条は、別添1のリストに掲載されていない機器や素材について、関係者がCOFEPRISに対してリストに含めるよう要請することができるとしており、COFEPRISは90日以内に当該要請者に対して回答すると規定している。また、COFEPRISは最低でも年に1回リストの見直しを行い、毎年8月に見直したリストを官報で再公示することを定めている(同第6条)。

<COFEPRISの行政負担軽減が主目的か>
今回の省令は、保健一般法第262条の定義では医療機器や医療関連素材とみなされない機器や素材を「非医療関連機器・素材リスト」として別添2に定めている(添付資料の表2参照)。別添2に掲載された機器や素材は1,669品目に上る。

別添2に掲載された機器や素材は本来、医療関連ではないため、衛生登録や輸入に際しての輸入衛生許可は必要ないが、製品の用途や成分などから医療関連と混同されることが多く、政府当局(税関や消費者保護検察庁など)との余計なトラブルを避けるために企業が慣習的に衛生登録を行っているケースがあった。今回、別添2として官報公示することにより、医療関連でないことを明確にし、企業が本来必要のない衛生登録を行わなくてもいいようにした。

COFEPRISのミケル・アリオラ委員長は、1,669品目の「非医療関連機器・素材」の明確化と「低リスク医療関連機器・素材」96品目についての手続き簡素化により、医療機器業界の行政手続きコストを12.1%削減し、GDPの0.031%に相当する40億2,100万ペソ(1ペソ=約5.6円)の経費節約につながると強調している(COFEPRISプレスリリース12月31日)。

医療機器の衛生登録は、COFEPRISの人員不足や予算不足が影響し、衛生登録に実際に要する期間は法定の審査期間を大幅に上回っている。衛生登録までに9〜12ヵ月かかることも珍しくなく、クラスIIIの医療機器の場合、2年間かかった日系企業の事例もある。医療機器を販売する進出日系企業にとって、COFEPRISの衛生登録手続きの遅延はビジネス環境上の大きな問題になっている。

しかし、今回の措置は企業に対する簡素化措置というより、COFEPRIS自身の行政負担を軽減する目的が強いと指摘する関係者も多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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