バブル崩壊から3年、「バッドバンク」導入を検討

(スペイン)

マドリード発

2011年12月26日

大手銀行の資本増強が進んでおり、その過程で国外資産圧縮の動きも一部にみられる。一方、金融システム最大の問題の住宅バブルに伴う不良債権処理については、「バッドバンク」導入をめぐる議論が高まっている。

<サンタンデール銀行は中南米資産の一部を売却>
欧州銀行監督庁(EBA)が12月8日に発表したEU域内主要銀行の査定結果(9月末時点)では、9%の中核的自己資本(コアTier1)基準を満たすためにスペインの金融機関が必要とする追加資本額は、合計261億7,000万ユーロになった。10月に発表された前回結果(6月末時点)とほぼ同じ水準を維持した(2011年11月7日記事参照)

スペイン中央銀行は査定対象の5行について「資本増強に当たり増資や公的資本投入の必要はなく、12年6月末までに問題なく基準を満たすことが既に明らかになっている」とのコメントを発表、この結果は国内では肯定的に受け止められている。

なお、追加必要額が153億ユーロと最大のサンタンデール銀行は、転換社債の期限前償還や機関投資家が保有する劣後債のシニア債への交換で資本強化を図る一方、12月初旬には中南米の小規模事業(チリ子会社の一部やコロンビア子会社)の売却を通じて資産を圧縮し、約8億6,000万ユーロの利益を得た。

<金融再編第2波でさらに金融機関数は減少へ>
スペインの金融システムの本質的な問題は大手行のリスクではなく、住宅バブルに伴う不良債権処理がほとんど進んでいないことだ。これまで政府と中銀は、公的支援のための金融再編基金(FROB)とスペイン独自の自己資本強化規制(原則8%のコアTier1基準)をベースに、貯蓄銀行(カハ)を中心とする金融機関の再編を進め、9月末には国内の金融機関数はバブル時の53行から23行(うち貯蓄銀行は45行→15行)まで減少した。

その後、10月には財務状態の良い普通銀行の合併(ポプラール銀行とパストール銀行)による規模拡大があり、11月にはサバデル銀行が国有化されていたカハ・メディテラネア貯蓄銀行(CAM)を買収して国内第5位の金融機関になった。また、新たな公的介入もみられるなど、第2の再編というべき新たな動きが始まっている(現時点の金融機関数は21行)。しかし、貯蓄銀行のうち4行が依然として、実質的に国有化されたままだ。うち一部は不動産関連の巨額の不良債権処理コストを公的資金だけで賄うことは困難なため、売却のめども立っていない。

12年は民衆党(PP)新政権による緊縮財政の本格化や世界経済の減速で、経済・雇用の停滞が確実視されている。こうした中で、金融機関は業績悪化や不動産関連資産の劣化、公的資金の返済などを迫られることになり、生き残りのためには一層の再編が不可欠になる。業界では、最終的には資産額1,500億ユーロ以上の金融機関15行程度にまで統合していく必要があるとしている。

<中銀総裁が「バッドバンク」肯定の発言>
こうした中、政府や中銀も金融再編第2波を後押しする動きをみせている。

現政権は12月2日、預金者保護基金(FGD)への金融機関の拠出率の大幅引き上げ(預金額の1%または0.6%→2%)を承認した。これにより、金融機関の財務健全化にも充てられる同基金の残高が12年初めには65億ユーロまで拡大し、公的資金(税金)だけでなく銀行にも負担を求めることができる。

フェルナンデス・オルドニェス中銀総裁は12月初旬、「金融再編はまだ終わっていない」として、金融機関がバランスシートに抱える不良資産をいったん特別目的事業体に移管して処理する「バッドバンク」を肯定する発言を初めてした。ラホイ新首相も、これを不良債権処理策の可能性の1つとして検討しているといわれる。

国内第4位のバンキアは12月に入ってグループ内のすべての不動産部門を一本化すると発表したが、これも今後の「バッドバンク」導入の際の移管オペレーションを視野に入れた動きといわれる。なお、銀行による不動産部門設立は、年後半から活発化している。公的資金を必要とせず、不動産や関連債権をバランスシートで長期間保持できるビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)やラ・カイシャなどの大手行にとっても資産を集約することで、保有する不良債権を一括して第三者に売却するバルクセールなどの推進が期待できる。

<「ゾンビ銀行」を放置するな>
バッドバンクの導入については懐疑論もある。不良債権にかかわる損失計上の「さじ加減」を間違えたため最終的に銀行救済コストが膨らみ、財政が急速に悪化したアイルランドの教訓もある。

特にこれまで公的資金に頼らずに資本増強を進めてきた普通銀行は「導入に全面的に反対するわけではないが、自力で評価損を吸収できない銀行だけを対象とし、その後の別銀行への統合を前提とすべきだ」(ビリャサンテ・スペイン銀行協会会長)という立場だ。

ゴンサレスBBVA会長は2年前から「不良債権を抱え込み、公的資金で生きながらえる『ゾンビ銀行』は、ほかの金融機関に買収されるべきだ」と主張してきた。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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