公務員改革が本格化−賃金カットと人員削減を強化−
ミラノ発
2011年12月26日
2011年10月に可決された中期財政計画(12〜15年)を受け、公務員給与の改定賃金テーブルが11月1日に、人員削減のための労働予備制度に関する規定が11月28日にそれぞれ発効し、公務員制度改革が本格化し始めた。一方、12月15日に発表された11年第3四半期の失業率は、統計を取り始めた1998年以来最悪の17.7%になった。失業率は13年まで上昇が続く見通しだ。
<公共部門の賃金は09年の65%の水準に>
新たな公務員給与の改定賃金テーブルでは、最低基本給を月780ユーロ、祝日・休暇手当を含む給与の上限を3,000ユーロと定め、配偶者手当を含む多くの手当を廃止し、職種・役職にかかわらず一律に適用される。また、業績手当が定められ、残業手当が大幅に削減される。各給与には学歴と勤続年数を基準に最低ランクの6から最高ランクの1まで6段階の等級がつけられ、公務員は等級に応じた基本給を受け取る。各等級には、さらに個別に昇級可能な小区分の等級が設けられている。
公務員労組の試算によると、この改定は平均約20%の所得カットにつながる。既に施行されている前回の緊縮策(2010年3月24日記事参照)による給与カットと合わせて、公共部門の賃金は09年12月の65%の水準に設定され、従業員1人当たりの平均賃金コストは月1,900ユーロに制限される。政府会計検査院(GAO)は、公共部門の賃金の上限設定と単一賃金基準への改定により、年間約20億ユーロの歳出削減につながると推計している。
<労働予備制度で人員を削減>
また、公共部門職員の労働予備制度(注)に関する規定が、11月28日から適用された。この規定により、まず約1万4,000人の職員が歳出カットのために職場を去ることになった。既に定年退職年限に達している約3,000〜4,000人はすぐに退職。13年までに定年退職年限に達する約1万人は労働予備役に移行し、退職までの残りの期間は通常給与額の60%の支給を受けるが、一時金などは支給されない。ただし、銀行ローンを抱えている職員に対しては特例法による返済策がとられる。
さらに、間もなく統合や閉鎖される36公共機関の余剰人員(約7,000人)や、退職までの期間が2年以内の人(約1万2,000人)が12年1月から労働予備役に移される。
<失業率は13年まで悪化の見通し>
統計局が12月15日に発表した労働力調査によると、11年第3四半期の失業率は17.7%(男性15.0%、女性21.5%)となり、統計を取り始めた98年以来最悪の数値になった。若年層(15〜29歳)の失業率は35.3%、女性若年層は40.8%に上る。また、失業率は12年にさらに悪化し、13年は19.5%まで上昇を続けると予測されている。
過去12ヵ月間で失業者数は25万6,328人増加。主に建設、卸・小売り、製造、農業の各部門で雇用環境が悪化した。長期失業者(1年以上失業状態の人)が総失業者の53.2%を占め、失業率の上昇だけでなく失業の長期化も進んでいる。
(注)退職年限に達していない人を解職し、給与の60%を支給する制度。一時金などは支給されない。労働予備制度施行法によると、労働予備役という状態は、1年または2年を超えることはできない。
(野嶋生代、三宅悠有)
(ギリシャ)
ビジネス短信 4ef2b8f9084d0