中国本土の債券・株式への投資を解禁−CEPA第8次補充文書に調印−

(中国、香港)

香港発

2011年12月26日

中国商務部と香港政府は12月13日、経済緊密化協定(CEPA)の第8次補充文書に調印した。中国本土の債券・株式への投資解禁など、サービス分野の一層の市場開放に加え、ゼロ関税の適用要件の緩和などが盛り込まれた。発効は2012年4月1日。

<サービス分野の開放は47分野に拡大>
CEPA第8次補充文書には、新規3分野(学際的研究・実験開発サービス、製造業付随サービス、図書館・博物館その他文化サービス)を含む16分野で32項目の自由化措置が盛り込まれ、開放済みのサービス分野は44分野から47分野に拡大する。32項目の自由化措置のうち15項目は、中国の李克強副首相が11年8月に香港を訪れた際にコミットした措置を実行に移したものだ。主なものは次のとおり。

○証券
香港から中国本土の債券・株式市場への人民元建て投資を解禁する「人民元適格海外機関投資家制度(RQFII)」を導入する。投資枠の上限は200億元(1元=約12.3円)の見込み。

○保険
10年以上の業務経験を持ち、50万香港ドル(1香港ドル=約10円)以上の総資産を保有する保険代理店に対し、パイロット事業として、広東省に限定して単独資本による保険代理店の設立を認める。

○銀行
香港の銀行が設立した中国本土の銀行に対し、投資信託の販売を認める。

○医療
中国本土での単独資本の病院の設置を、すべての直轄市、省政府所在地で認める(10年の第7次補充文書では設置できる場所は5都市に限定していた)。

○技術検査・分析および製品検査
香港政府が認証した機関に対し、すべての香港製品について中国本土の強制認証制度(CCC)の測定業務を行うことを認める(第7次補充文書では、測定業務の対象製品は一部に限定)。

また、財の貿易でのゼロ関税適用範囲が拡大され、香港企業が中国本土で生産された原材料や部品を使用する場合、CEPA原産地基準を利用することを認めた。具体的には、ゼロ関税適用には、一部商品については香港での付加価値が30%以上になる必要があるが、付加価値の計算に当たり、中国本土で生産された原材料・部品の価格を一定の範囲(15%)まで算入できるようにする。

さらに、CEPAを利用できる「香港サービス提供業者」の定義が拡大された。認定されるためには、中国本土で営もうとする業務と同様の業務を香港で営む必要があったが、原則として、この制限がなくなった。

<経済界は歓迎>
「商報」(12月14日)は、香港政府関係者の「今まで、中国本土で外資が単独で保険代理店を設立するためには、30年以上の業務経験と2億米ドル以上の総資産が必要だった。今回のCEPAにより、条件がかなり緩和された」というコメントなどを掲載している。中華廠商聯合会は「特にゼロ関税の対象拡大のメリットは大きい。また、香港でできる検査サービスの範囲を拡大し、香港の検査業界に発展のチャンスを与えるものだ」、香港総商会の胡定旭(アンソニー・ウー)主席は「サービス提供者の定義の拡大を歓迎する。香港企業が中国本土に対し、より多様なサービスを提供することが期待される」とコメントしている。

現在の香港政府の最大の関心事項は民生の拡充で、経済政策については必ずしも十分とはいえない状況だ。行政長官選挙(12年3月)の最有力候補の唐英年(ヘンリー・タン)前政務長官も住宅政策や所得格差の是正などに熱心だ。こうした中で、今回の補充文書で香港のビジネスの可能性を一層広げる措置が打ち出されたことは歓迎できるといえよう。

日系進出企業も、これまでは原産地基準がネックになり、ゼロ関税の適用を受けることは難しかったが、今回の基準緩和で業種によっては活用の余地が高まると期待される。

(姚慧俐)

(香港・中国)

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