日本の自動車部品産業、震災を教訓に一層強い存在に−米国自動車部品業界代表が東北訪問−

(米国)

シカゴ発

2011年12月21日

米国自動車部品工業会(OESA)のニール・デコッカ代表は12月8日、ミシガン州デトロイト近郊のノバイ市で開かれたジェトロ主催の「ものづくり復興セミナー」で、自らが11月に訪問した東北地方の復興状況を、参加した225人の日米自動車関係者に報告した。同代表は「日本の自動車部品のサプライチェーンは東日本大震災の教訓を踏まえて将来の準備を行っており、自動車サプライチェーンの中で一層強靭(きょうじん)な存在になると確信した」と語った。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<実感した日本のものづくりスピリット>
デコッカ代表は11月28〜29日、ジェトロの招きにより、マーガレット・バクスター副代表とともに東日本大震災に見舞われた東北地方を訪問した。宮城県では、震災と津波によって大きな被害を受けたものの早期復興を遂げた岩機ダイカスト工業(山元町)とアルプス電気(大崎市)、福島県では、NOK福島事業所を視察し、被災から製造再開までの経緯を聞くとともに、復旧した工場を見学した(添付資料参照)。

同代表は「被害を受けた製造現場やインフラ設備の復旧のスピードは驚異的だった。また、競合企業に金型を持ち込んで代替生産を依頼したり、一時的に設備を移動して生産するなど、サプライチェーンの継続性を確保するために各企業が責任感を持って全力を尽くしたことを知り、感銘を受けた」と語った。

同代表は経済産業省自動車課、宮城・福島両県庁で、被害・復興状況の説明を受け、仙台国際貿易港、仙台空港も視察した。自動車の輸送オペレーションなどを含め、津波の爪あとが残る地域でも自動車産業のサプライチェーンが着実に復興している様子を見学し、「もし数ヵ月前に震災があったということを聞かなければ、全く気付かないほど通常どおりの姿だった」と印象を述べた。

「(視察を通じて)どの企業からも強い『意思』を感じた。それは、早期に工場を復旧すること、そして、顧客、従業員、地域にコミットメントを示すことで混乱を乗り越えようという意思だ。そこに迷いはなく、問題はどれだけ早く達成するかだけだった。あとは目的達成のための障害を見つけて克服することに集中していた。この強い『意思』こそ、ものづくりスピリットだと実感した」という。

<既に視線は将来に向かっている>
今回の東北訪問の総括として、デコッカ代表は「今回の一連の企業、自治体への訪問を通じて、不可抗力条項や各企業のコスト負担などの話は全く話題にならなかった。それどころか今回の震災の教訓を生かし、既に緊急時事業継続計画などを策定し、将来のための準備を行っていた。この経験から学ぶという姿勢が大変重要で、私は東北などの日本の自動車部品サプライヤーは、自動車サプライチェーンの中で一層強靭な存在になると確信した」と語った。

「日本の製造業は依然として力強く、顧客に対する責任を果たし続けるということを報告したい。品質、コスト、納期などで顧客の期待に応えるために不断の努力を続けることで、日本社会、そして世界の部品産業界の重要な役割を担い続けるだろう」と締めくくった。

円高や競合企業の台頭もあり、日米の自動車・同部品メーカーによる協業の重要性が一層増している。今回、米国自動車関連団体の代表が自ら復興現場を訪問し、そこで見てきたことを、米国自動車産業の中心地、ミシガン州デトロイト近郊の業界関係者に対して、直接自分の言葉で報告した意義は大きい。セミナーに参加した米企業経営者らは「震災後の現場で何が起こっていたかを初めて知ることができ、非常に興味深かった」と語るなど、真剣に聞き入っていた(2011年12月19日記事参照)

(柴原友範)

(米国)

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