製造下請業者から悪質零細企業を排除−労働省新規則を施行−
マニラ発
2011年12月21日
原則禁止とされている「人材派遣業」に極めて類似するものの、合法とされている「製造下請業」に対する規制が強化されることになった。労働省新規則(Department Order No.18−A、2011)で、あらためて「人材派遣」の禁止を確認するとともに、下請業者に対して最低資本金制度を設けるなど、労働者保護政策を強化する内容になっている。新規則は11月19日に公示され、12月5日に施行された。
<最低資本金制度などを導入>
労働法上(第106条、109条)、人材派遣(labor−only contracting)は原則として禁止されており、例外的に「本業以外の分野(例えば、警備員・清掃作業員など)」への人材派遣だけが認められている。
人材派遣とは、「労働者を使用者に提供する者が、十分な機械・設備などの資本を保有せず、使用者の本業に従事させる目的で労働者を派遣すること」と定義している。
フィリピンでは6ヵ月間の試用期間経過後は、すべての従業員を正社員と見なすという労働法上の規定がある。そのため、受注変動の大きい製造業界では、極力正社員の数を抑えるため、限りなく人材派遣に近いかたちの「製造下請」契約をベースに、一部製造ラインを外注しているのが実態だ。
この製造下請業に関する労働者保護政策は、1997年に初めて施行された労働省規則(1997−10号)でガイドラインが示され、単純人材派遣業者を排除してきた。今回の改正新規則は零細業者を排除し、労働者保護政策に適正に対応できる下請業者を育成する目的で制定された。労働省は、今回改正のポイントとして以下の8点を挙げている。
(1)製造下請業を合法な業態と認め、責任と職業倫理を求める
(2)製造下請業者が雇い入れる従業員は雇用関係に基づくものとし、人材派遣・職業紹介に類似する行為を禁止する
(3)最低資本金額(払い込み済み)を300万ペソ(1ペソ=約1.8円)とする(注1)
(4)登録料として年2万5,000ペソを徴収する(注1)
(5)下請業者から発注者に請求する管理費は10%を標準とする(注2)
(6)下請業者が規則に違反した場合は、その従業員は登録取り消しを請求できる
(7)下請業者は、従業員を解雇する場合、手続き規定を厳守する
(8)新規則順守モニタリング委員会を設置する
(注1)最低資本金額の設定、登録料の値上げは、悪質零細業者の排除が目的。
(注2)標準管理費10%の設定は、ダンピング競争に陥っている業界の適正育成が目的。
(辻一郎)
(フィリピン)
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