外国人就労規則を改正、厳格化

(ウズベキスタン)

タシケント発

2011年12月07日

外国人に対する就労規則が改正され、申請書の提出先の変更、取得する査証タイプの限定、審査期間の延長などのほか、当該外国人を雇用する必要性の説明項目が追加された。今回の改正は現状の手続きに合わせただけだという見方もあるが、厳格化された内容も多く、自国民の雇用を優先させるための政策ともいえる。

<自国民の雇用促進が狙い>
労働社会保障省は9月30日、外国人就労規則の改正(法令No.285−1)を施行した。手続きの厳格化とともに、当該外国人の就労の妥当性を事前に問う書類が増えた点が特徴で、自国民の雇用を促す内容になっている。

主な改正点は、以下の8項目。

(1)外国人の雇用に当たっては、労働社会保障省付属の対外労働移民問題庁の許可を取得する(これまでは各地方労働局で手続き)

(2)許可権限者は対外労働移民問題庁長官、不在の場合は長官が指名した者(これまでは各地方局の所長)

(3)申請書に対する企業の承認の取り付け(これまでは雇用主の署名のみ)

(4)許可審査期間を30日に延長(これまでは15日)

(5)申請者はEビザ(労働査証)、B−1またはB−2ビザ(申請時点で就業登録がある、または、ない者に対する業務査証)およびS−3ビザ(政府が招待状を発給した者に対する公用査証)のいずれかを持っていること(これまでは観光ビザ、または非労働と記載されているビザ以外)

(6)当該職務に外国人労働者を雇用する必要性の説明(新たに追加)

(7)当該職務を遂行するために必要な教育を受けた証明書、または妥当な能力があることを証明する書類(新たに追加)

(8)提出する写真と質問項目の追加(これまでは6項目だった質問事項を16項目に拡大)

<恣意的な運用に懸念も>
今回の改正による影響について、現地進出企業の駐在員は「大きな変化はない」とコメントした。(4)の許可審査期間を30日に延長したことについては、そもそも審査委員会が月1回の開催だったため、むしろ実態に合わせたものになったという。(5)の取得する査証タイプについても、就労形態に合わせた査証を取得することは大きな問題にならない。また、(6)についても、現状で既に十分説明できるよう対応しているため、記載されたとおりの手続きをウズベキスタン側が正しく行えば、特に問題は起こらないという見方のようだ。

一方で、今回の改正は新たな利権構造の形成を目的としているのではないか、と改正そのものを疑問視する声もある。有識者に今回の改正の方向性を尋ねたところ、中には法令改正がなされたこと自体認識しておらず、法令番号を聞き返す議員もいた。

(2)によって、これまで各地域で対応していた許可手続きが、基本的には対外労働移民問題庁長官の専権事項になり、物理的に対応できるのか疑問だ。審査期間がいたずらに延びてしまうことで、特に研究開発業務など、許可のタイミングが重視される分野に携わっている場合は、業務に支障が生じる恐れがある。このため、便宜を図る利権構造が生まれるのではないかという見方もある。

追加された項目には、当該ポストに外国人を就ける妥当性を説明するものが多い。恣意的な法制度の運用がなされた場合、直接投資にブレーキをかける懸念もある。国が進める外資誘致政策との整合性がとれた運用が望まれる。

(末廣徹)

(ウズベキスタン)

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