日蘭新租税条約の適用は12年1月1日から

(オランダ)

アムステルダム発

2011年12月06日

議会は11月15日、日本との新租税条約締結を承認した。11月29日に両国政府間で外交文書が交換された。これにより日蘭新租税条約は12月29日に発効し、2012年1月1日から適用される。

<配当源泉税を基本的に免除>
現行の日蘭租税条約は1970年に締結(1992年に一部改正)されたもので、今回、全面改正された。2009年12月に基本合意に達し、10年8月に署名されていた(2010年8月27日記事参照)。今回の改正の特徴は、投資所得に対する源泉地国での課税の軽減、条約の乱用防止規定の導入、両国間で課税上の取り扱いが異なる事業体(ハイブリッド・エンティティー)の規定の導入、相互協議手続き条項への仲裁規定の導入、などだ。

特に今回の条約の改正で注目されているのは、オランダに子会社を持つ日本企業は、オランダの子会社からの配当源泉税率を現行の5%から0%に軽減されることだ。ただし、軽減税率の適用対象は、特典制限条項(LOB)の要件や導管取引防止規定など一定の要件を満たす必要がある。

新条約に基づく配当源泉税の免除に当たっての手続きは、a.配当決議と議事録の作成、b.租税条約の適用を受け、配当源泉税の免除を受けることの承認を配当源泉税申告書提出前に取得、c.配当源泉税の申告、だ。

オランダは日本企業誘致を積極的に進めており、ビジネス環境の整備に当たっては日系企業との対話を欠かさずに行っている。例えば、オランダの法人税率は10年まで25.5%だったが、この税率変更の際にも日系企業との意見交換が行われた。その結果を踏まえて、当時の日本のタックスヘイブン対策税制のトリガー税率(注)25%に配慮した税率に設定されたといわれている。

政府は今回の日蘭租税条約改正を日本企業誘致の強力なツールと考えている。10年以降、投資誘致機関は日本の金融機関などと協力し、日本国内で積極的に「オランダ税制を活用した国際企業展開戦略のメリット」をPRしている。

(注)日本の外国子会社合算税制の下では、一定の税負担水準以下の国・地域にある一定の子会社などの所得に相当する額を、内国法人などの所得に合算して課税することになっている。トリガー税率とは、その一定の税負担水準を指す。当時は法人税率が25%以下になれば、オランダ法人の所得が日本の内国法人の所得に合算して課税されてしまう恐れがあった。なお、現在のオランダの法人税率は25%だが、トリガー税率も20%に引き下げられているため、税負担が増える恐れはない。

(川西智康)

(オランダ)

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