民間出身者で固めたモンティ新内閣が発足
ミラノ発
2011年11月21日
ベルルスコーニ首相の辞任に伴い、その後継となるマリオ・モンティ新内閣の顔ぶれが11月16日、発表された。モンティ新首相は経済学者で、閣僚には政治家を一切起用せず、学者や民間企業関係者らで固めた。議会や経済界からの反応は良く、順調な滑り出しとなったが、取り組むべき課題は多い。
添付ファイル:
資料( B)
<予算法成立と引き換えにベルルスコーニ氏辞任>
下院(630議席)で11月8日、2010年の決算承認のための決議が行われ、賛成308票、棄権1票、無投票321票で可決された。しかし、与党を構成していた議員8人が造反し、ベルルスコーニ政権は下院で過半数を確保できないことが明確になった。また、債券市場でも、イタリア国債とドイツ国債とのスプレッドが拡大を続け、信用不安が収束する気配がみえない状況となり、ベルルスコーニ氏は同日夜、ナポリターノ大統領に12年財政法(予算法)成立後に辞任する意向を伝えた。
その後、11月11日に上院が、12日には下院が、それぞれ同財政法を可決。週明けの金融市場への影響を考慮に入れ、上院で法案が可決された翌日に下院が可決するという異例のスピードで議会承認された。ベルルスコーニ首相は12日夜にナポリターノ大統領に辞表を提出した。
翌13日、ナポリターノ大統領は上下両院議長、各党の党首らを大統領府に招集して相次いで会談を行い、マリオ・モンティ氏に組閣を要請した。
モンティ氏は、名門のボッコーニ大学の学長を務めた経済学者。1995年から04年まで欧州委員会で、市場・金融サービス・金融統合や競争政策などに関する委員を務めた。また、国際的な企業の国際アドバイザリーボードの委員を務めるなど、幅広く活躍してきた。
<モンティ新首相が経済・財務相を兼任>
モンティ氏は組閣に着手し、11月16日に閣僚名簿を発表した(添付資料参照)。新内閣には議員の入閣はなく、主に学識経験者、弁護士、エンジニアなど、各分野の専門家で固められた。
経済の立て直しが新政権最大の課題となる中、注目された経済・財務相はモンティ首相が兼務する。また、外相には駐米国大使のジュリオ・テルツィ・ディ・サンタアガタ氏が、経済開発相(インフラ・交通相兼務)には、イタリア大手のインテーザ・サンパオロ銀行の最高経営責任者(CEO)コッラード・パッセラ氏が就任した。労働市場改革や年金改革などの課題が山積する労働・社会政策相にはトリノ大学の経済学教授エルサ・フォルネロ氏が起用された。名簿発表後に大統領府で宣誓式が行われ、モンティ内閣は正式に発足した。
17日には上院でモンティ内閣に対する信任投票が行われ、賛成281票、反対25票で、18日の下院でも、賛成556票、反対61票といういずれも圧倒的多数で信任された。ベルルスコーニ政権時の最大与党「自由の国民(PdL)」も信任票を投じた。しかし、唯一新政府に対して反対の立場を貫いているのが北部同盟(LN)で、同党首のウンベルト・ボッシ氏は、モンティ首相は「穴埋めだ」とし、同党の一部議員も、新政府は公的資金の無駄遣いや国際的な金融投機のコストを国民に押し付けることになるだろうと語り、反対の立場を鮮明にしている(「コリエーレ・デッラ・セーラ」紙電子版11月18日)。
経済界からの新内閣に対する反応は良く、「イルソーレ24オーレ」紙(11月17日)は、新内閣の顔ぶれは、高い専門性、能力、奉仕の精神を示しているという経済界の評価を報じている。
高い評価を受けての船出となるモンティ新政権だが、財政措置の実施、生産性や競争力の向上、成長の拡大、社会格差の減少など、取り組むべき課題が山積している。
(三宅悠有)
(イタリア)
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