REの固定価格買い取り制度、12月からスタート

(マレーシア)

クアラルンプール発

2011年11月04日

2011年12月から再生可能エネルギー(RE)の固定価格買い取り制度(FIT)が本格的にスタートする。4月にRE法案が議会を通過し、7月から開始の予定だったが、2度延期され、12月1日から申請を受け付けることになった。国内には欧米企業の太陽光発電設備工場が活発に進出しているが、本制度をきっかけに発電事業自体への海外企業の進出の動きも出始めている。FITの概要について、エネルギー・環境技術・水省(KeTTHA)への取材を踏まえて紹介する。

<登録が遅くなるほど買い取り価格は低減>
バイオガス、バイオマス、廃棄物発電、小規模水力、太陽光発電の5つのREによる30メガワット(MW)以下の事業が本制度の対象となっている。太陽熱、風力、地熱は現時点では対象外になっているが、今後見直される可能性はある。

各エネルギーごとに1キロワット時(kWh)当たりの単価が設定され、公表されている(表1参照)。事業者の投資リスクを軽減するため、一定年数(例えば太陽光発電の場合21年間)同一価格で支払いが行われるが、登録時期が遅くなればなるほど、その価格は下がる、つまり、登録が早いほど高い固定価格で販売できる仕組みになっている。

特に太陽光発電については、年8%という高い逓減率が適用される一方で、小規模水力は0%になっている。また、国内で製造または組み立てられた機器を使った場合には、価格にボーナスが付加される。

表1太陽光発電にかかる価格表

<エネルギーごとに買い取り総量に上限>
電力料金の値上げ分(1ヵ月300kWh以上の顧客の電気代を1%値上げ)がFITの財源になるため、各エネルギーごとに買い取り総量に上限が設定されている(表2参照)。

ただし、この総量は目標で、財源や登録状況を考慮して適宜変更されることになる。既に、最新の持続可能エネルギー開発庁(SEDA)のウェブサイト上では各エネルギー間の割当量が変更され、太陽光発電への割り当てが大幅に増加している。KeTTHAによると、前記1%の電力料金値上げで15年ごろまでの財源は確保される予定だという。ただし、今後のさらなる電力料金値上げには政治的困難も予想されるため、15年以降の買い取り総量が目標どおりに順調に拡大するかどうかは、不確実さが残っている。

表2累計買い取り総量

<実施はSEDAが一元的に担当>
FITの大きな方向性についての検討はKeTTHAで行われたが、制度の実施はKeTTHAの下に設立されたSEDAが一元的に担うことになっている。

13年までの枠について、11年12月から申請の受け付けが始まり、オンラインでの申請もできる。先着順で枠を割り当てることになっており、上限に達し次第、受け付けを締め切る。また、枠の不当な独占を排除するため、詳細な事業プランの提出や事業の進捗状況の定期的な報告を求めるとしている。

<FIT事業者には外資規制も>
FIT事業者には、外資規制(50%以上が国内資本)が適用されるので、外国企業が事業を行うためには、適切な地元企業のパートナーを見つける必要がある。また、電力事業者になるためには、別途エネルギー委員会の認可が必要だ。電力系統への接続には、電力会社と調整する必要がある。

なお、RE事業者には、税制優遇が用意されている。1つは、設備投資に対する税額控除だ。RE事業で5年間に発生する投資額を、所得から控除できる。または、それに代えて、投資後10年間にRE事業で得られる利益に対する所得税の免除を選択することもできる(Pioneer Status)。さらに、関連機器・施設購入にかかる輸入税や物品税の1年間の減免制度もある。税制優遇は、マレーシア工業開発庁(MIDA)が一元的な窓口になっている。

(竹廣克)

(マレーシア)

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