労働組合法を公布−スト権も容認−

(ミャンマー)

ヤンゴン発

2011年10月20日

政府は10月12日、58条からなる労働組合法を国営紙を通じて発表した。軍政下では組合活動は禁止されてきたが、労働者の権利を保護し、良好な労使関係を維持するため、1926年制定の労働組合法(The Trade Unions Act)を改訂するかたちで公布された。新政権はこれまでの軍事政権時代の制度を次々に見直しており、今回の労働組合法の制定も新たな民主化措置の1つとして注目を集めている。

<民主化措置の一環>
同法で定める「労働者」は、日雇い労働者、臨時雇用労働者、農業労働者、メード、公務員、見習工などを含み、国軍、警察、その他武装勢力関係者は含まない。労働組合を組織するには最低30人以上の労働者が雇用されていることと、全労働者の10%以上の参加が必要だ。つまり、30人雇用の工場なら3人以上、1,000人雇用の工場なら100人以上の支持が必要になる。逆に29人以下の工場であれば労働組合を組織する条件を満たさないことになるが、ほかの企業と共同で組合を発足させることは認められるようだ。

各組合は、労働関連法規に規定されている権利を享受できない場合には雇用者側と交渉できるとされている。ストライキを行う権利も定められており、実際にスト権を行使する際には、事前に使用者と仲裁団体に対して実施日時、場所、人数、方法、期間などを届け出なければならない。仮に違反した場合は、程度によって1年以下の留置、罰金などが科されるようだ。また、病院、学校、宗教施設、空港、鉄道駅、バスターミナル、外国大使館、軍関係施設、警察署などから500ヤード(457.2メートル)以内でデモを行ってはならないとも定めている。

<貧富の格差は拡大傾向>
敬虔(けいけん)な仏教徒が多く、一般的に争いごとを好まない国民性も影響してか、細かな労務問題(欠勤、遅刻、不服従、軽微な備品の盗難など)はあっても、裁判や労働争議に発展するようなケースはこれまでもまれだ。しかし、近年広がりつつある貧富の格差拡大を受け、政府(労働局)は労働者の雇用条件改善に取り組んでおり、今回の発表もそうした社会環境の変化を受けて行われたと考えられる。

現段階では、労働者が表立って組合を組織して経営者側に交渉の場を求めるような動きは出てきていないが、今後の状況を注意深く見守る必要がある。また、今回の政府の発表はミャンマー語だけで、本稿では「労働組合」と訳したが、厳密なミャンマー語の意味では「労働団体」に近い語感になる。実際にどういう組織体になるかも併せて今後の経過をみていく必要がある。

(水谷俊博)

(ミャンマー)

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