地方で直接仕入れた日本産水産品を米国へ−輸入卸売会社インターナショナル・マリン・プロダクツ−

(米国)

ロサンゼルス発

2011年10月28日

水産・水産加工品を中心とした輸入卸売会社インターナショナル・マリン・プロダクツ(IMP、本社:ロサンゼルス)は、日本各地で水産品などを直接仕入れ、新鮮な状態で米国に輸出している。同社のマーケティング・マネジャーの百瀬慶広氏に、震災前から現在までの取り組みや今後の方針について、9月30日に聞いた。

百瀬氏の話の概要は以下のとおり。

<地方で直接仕入れ、鮮度を保ったまま輸出>
当社は、日本各地から鮮度の高い水産物を輸入し、米国市場に提供することを目的に2010年の暮れから調査を始め、これまで各地で商談してきた。

水産物を鮮度の高い状態で米国に持ち込むために2つの工夫を考えた。1つは、これまでは東京の築地市場で購入していた地方の水産物を、各地の魚市場で直接仕入れ、それらを独自に築地でまとめて米国に送り、築地での売買にかかる時間を短縮すること(現時点で20〜25時間の短縮になる)。もう1つは、各地の魚市場で購入する際、米国に着くまでを考慮した保存状態にすることだ。

現在はこの2つの工夫が実ってきており、米国に日本各地の新鮮な水産品が入荷され始めた。また、それぞれの水産品に合う地酒の仕入れも積極的に進めており、その成果を確信している。

IMPの卸売場

<震災直後に日本訪問、顧客に生の情報を提供>
日本各地の魚市場を回るため、震災直後の3月15日に日本に到着し、まず西日本の魚市場を視察した。当初は青森方面を予定していたが、3月11日の震災で急きょ予定を変更した。日本に行くのは控えた方がいいという声もあったが、このようなときこそ日本に行き、日本の魚市場などの状況を実際に見聞きし、情報を米国のレストランなどのバイヤーや消費者に伝える必要があると考えた。

米国に戻ってすぐに日本の情報を説明する報告書を作成し、当社の顧客のスーパーやレストランなどに提供した。その後すぐに、仕入れた魚介類の安全性を理解してもらうため、原子力発電所被災への対応として、税関国境保護局(CBP)と食品医薬品局(FDA)での放射線検査結果と、さらに放射線専門の研究所に依頼した調査結果データを、購入時に見えやすい位置に掲示するとともに、ウェブサイトに掲載した。こうした取り組みを、状況がある程度落ち着くまでの1ヵ月半から2ヵ月間行った。

IMP社内を背景に百瀬マネジャー

<ジェトロの商談会で同志に出会う>
米国内で日本産の魚介類に対する放射線汚染を心配する声が落ち着き、米国政府による日本産の魚介類の輸入禁止はないと判断した6月ごろから、日本に行って各地の魚市場めぐりを再開した。

そのような中、ジェトロ主催で7月31日〜8月10日に、東京、長野、北海道で食品輸出商談会があり、参加した。地元にこだわり、品質にこだわった魅力ある地方の水産品、日本酒の販売者たちと出会え、実りある商談をするとともに、米国に日本食を広めるための同志として今後一緒に活動していける人たちも見つかった。

米国に日本食を広めるためには、その背後にある日本の食文化も含めて広めていかなければ難しい。また関係者には1年に数回は米国に来てもらい、一緒に現地の状況を見聞きしてもらわないと、現地の状況が肌でわからず、日本食輸出方針の方向性がずれる可能性が高い。

地元企業の思いを米国に持ち帰ることができ、米国市場にぜひ日本の地方産品を提供していきたいとの気持ちを新たにした。

<地方からの仕入れも具体化へ>
地方の水産物を築地に持って行き、そこで売買するという方法が過去20年くらい続いており、それが当然になっていた。米国に新鮮な水産物を持ち込むため、各地で直接買い付け、保存方法を工夫するという2つの工夫は、各地の魚市場で当初話を持ちかけた際には決まって「そんなこと考えたことない」「できない」という反応だった。しかし、その活動に理解を示す人もいて、2つの活動が実を結ぶ場面も生じている。現在は金沢、青森、八戸、札幌の中央卸売市場で水産物の仕入れが具体化してきている。

金沢で直接仕入れた魚

米国の顧客に安全、安心、高品質な日本食品を提供することを使命として取り組んでいるが、そのための手法が10年、20年先も今と同じということはない。市場は常に、より良い新たな方法を求めている。

食は文化で、日本食に携わっている者として、いい加減なものでなく、きちんと正しい日本食、日本文化を米国に伝えていきたい、それをもって次世代にバトンタッチしていきたい、という気持ちを持って取り組んでいる。

百瀬氏による震災後の日本レポートはIMPのウェブサイト参照。

(中川健太郎)

(米国)

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