貿易手続きの電子化、11月22日から段階的に開始−12年1月末までに利用者登録が必要−

(メキシコ)

メキシコ発

2011年10月11日

国税庁(SAT)は10月3日、貿易手続きを電子化する「メキシコ貿易デジタル窓口(統一窓口)」(VU)の専用ウェブサイトを立ち上げた。11月22日から第1段階として経済省と大蔵公債省(SAT)の貿易関連手続きが電子化される予定だが、VU利用のためには利用者登録が必要だ。将来的にはすべての貿易関連手続きが電子化されるため、輸出入業者は第1段階の移行期間が終了する2012年1月末までに利用者登録を終える必要がある。

<手続きはVUのウェブサイトで>
VU計画は11年1月14日に官報公示され、経済省、SAT、公共行政省、農牧省、保健省、国防省、環境省、エネルギー省、公共教育省の9省庁からなる省庁間委員会が設立された。以下の3段階に分けて貿易手続きを電子化するための準備を進めている。

(1)第1段階(11年9月30日まで):経済省とSAT税関総局の手続き電子化
(2)第2段階(12年1月30日まで):国防省、環境省、農牧省、保健省の手続き電子化
(3)第3段階(12年6月30日まで):エネルギー省、公共行政省の手続き電子化

9月29日にSATが開催した説明会によると、このスケジュールは多少変更され、第1段階は11年11月22日から、第2段階は12年3月から、第3段階は12年5月から開始されるという。第3段階ではエネルギー省と公共行政省の手続きに加え、テキーラ規制評議会(CRT)やメキシコ・コーヒー生産チェーン協会(AMECAFE)の輸出関連手続きも対象となる。電子化された手続きは、すべてVUのウェブサイトを通じて実施できるようになる。

輸出入者はこのウェブサイトを通じて、a.輸出入申告、b.関連租税・手数料の支払い、c.非関税規制に関する輸出入許可の取得・事前通知の履行、d.手続き履行の状況確認と貨物の保税区域(倉庫)からの出庫、の4つが行えるようになる。

<実際の輸出入申告は登録通関士が実施>
ただし、ウェブサイトを通じてすべての貿易手続きが行えるといっても、メキシコの場合、輸出入申告は税関法に基づき、原則として登録通関士を通して行う必要があるため、ウェブサイトを通じた輸出入申告も登録通関士が行う必要があると考えられる。

なお、現在でも輸出入申告作業自体は「統合自動化税関システム(SAAI)」という電子システムを通じて電子化されており、登録通関士は輸出入申告書の内容を電子データとしてシステムに入力することになっている。ただし、添付書類は原則として紙媒体で、輸入貨物の通関時には、電子入力した輸入申告書の表紙(貨物の基本データと申告コードが記載)だけを印刷し、添付書類を添えて税関に提示することで通関が可能になる。

VUの導入後は、輸出入許可証などの添付書類もすべて電子化し、完全なペーパーレス税関の実現を目指している。

<時間と費用の削減効果を強調>
SATは9月30日付のプレスリリースで、電子システムを通じて手続きを一元化することにより、コストと時間が大幅に削減できる、とVUの効果を強調している。また、ペーパーレス化による森林資源の保全効果も重視している。

SATによると、貿易手続きには約30の主体(政府機関、民間企業、個人)が関与しており、40の書類、165の手続き、200の異なるデータが必要になる。今までは異なる管轄当局ごとにそれぞれの場所で手続きを行う必要があり、非関税規制対象品目の貿易では多くの時間と作業が必要だった。

SATはVUの導入により、すべての貿易関連手続きの窓口がウェブサイトに一元化され、輸出入業者にとっては導入前に比べて9割もの時間短縮につながる、と強調している。また、電子化された輸出入申告を税関の貨物検査員が電子的に読み取れる通信機材と通信環境(ワイヤレス・インターネット)の整備も進められており、通関時間を11%短縮する効果が見込まれている。通関時間の短縮は貨物輸送業者のロスタイムを少なくし、輸送業者の生産性向上にもつながるとしている。

通関に必要なコストの削減については、世界銀行が実施しているビジネス環境調査「Doing Business」のデータから、メキシコの現状の通関費用(20フィートの1コンテナ当たり1,880ドル)とVUを既に導入している国の実例を比較して、現状より1,000ドル程度のコスト削減が可能とみている。なお、ペーパーレス化の実現で保全される森林資源は、樹木に換算して年間2万7,000本に及ぶとしている。

<現時点で電子手続きの詳細は不明>
11年11月22日にVUの第1段階が開始される予定だが、具体的にどのような電子手続きが行われるのか、詳細には不明な点が多い。

1つはっきり決まっているのは、ウェブサイトを通じた各手続きの認証プロセスで、高度電子署名(Fiel)が使われることだ。Fielは主にSATの納税関連手続きで使われており、最近は他省庁の手続きでも使われるようになっている。二重の暗証番号と二重の電子キー認証を利用した電子署名で、納税者登録番号(RFC)に関連付けた認証手段だ。

SATはまず、すべての貿易関連主体にVUへの利用者登録を促し、10月3日から先のウェブサイト上で登録を受け付けている。RFCを持つ企業はFielを用いて企業としての利用者登録をするだけでなく、サイトへ必要データを入力する担当者、電子申請の進捗状況についての通知を受け取る担当者の個人登録も必要になる。利用者登録は12年1月31日までに行う必要がある。

SATは11年10月3日から12年1月31日までの期間を移行期間と位置付け、利用者からのフィードバックを受けながら、徐々に、段階的に電子化を進めていく意向だ。

第1段階では、輸出入手続きと保税転送手続きについてウェブサイトを通じて実施できるようにする予定だ。この段階では、インボイスなどの商品価格を証明する書類の電子化が計画されている。

商品価格を証明する電子書類は「価格電子証明書(COVE)」と呼ばれ、12年1月末までの正式導入を目指している。それまでの移行期間は、紙媒体のインボイスなども輸出入手続き上有効なものとして受け付けるが、12年2月1日以降は電子化する必要がある。COVEの様式やガイドラインなど詳細については、現時点では発表されていない。

なお、1月末までは紙媒体が許されるインボイスを除き、すべての通関関連書類(申告書への添付書類を含む)はウェブサイトを通じて電子的に提出する必要がある。ただし、現時点で船荷証券や原産地証明書などすべての通関関連書類が電子化されているわけではないため、実務上は紙媒体のものをスキャナーで電子ファイル化し、サイトにアップロードするなどの対応が必要になると思われる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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