日本産食品への逆風続く−欧州委員会規則期限延長−

(英国)

ロンドン発

2011年10月03日

日本からの輸入食品の放射線検査に関する欧州委員会規則は、有効期限が2011年9月末から12月末まで再延長された。英国では、消費者に対する風評被害は目立ってはいないものの、フードチェーンには確実に影響を与えている。日本産食品を扱う主要な事業者に聞き取り調査した。

<商品アイテム数が減少>
日本から入ってくるアイテム数が、震災前に比べて確実に減っているという声が事業者に多い。この主な理由として真っ先に挙げられるのは、英国の問題ではなく、日本側の協力が得られずに輸入を断念するというものだ。原産地証明書を発行する自治体の中には、体制が整っていない例があるという。また、証明書の発行にはメーカーの協力が必要だが、手間とコストがかかることを理由に、メーカーが輸出を断念するケースも多い。

日本から英国への商品輸送に、震災前はトータルで1ヵ月程度かかっていたが、現在は証明書の発行など諸手続きの増加で2〜3ヵ月程度かかるようになっている。このため、賞味期限が比較的短い日本産食品は非常に厳しい状況に追い込まれている。これに関連して、日本国内の事情で必要以上に短く設定されている賞味期限とは別に、輸出産品用の賞味期限を設定してほしいとの声も聞かれる。

<コスト高に韓国産の攻勢が追い打ち>
欧州委員会規則(2011年4月14日記事7月12日記事参照)がもたらすさまざまな要因で食品輸入コストが高くなっている。具体的には、日本側での証明書発行、放射線検査、英国でのサンプル検査のための抜き取りなどだ。他方、日本には放射線検査費用に対する補助金があり、日系事業者にはこの継続を望む声が多い。

欧州委員会規則以外の影響として為替レートを挙げる事業者が多く、同規則と同程度のダメージを受けているという声もあった。またEU・韓国自由貿易協定(FTA)締結で韓国産の輸出競争力が強まっており、日本産に対する逆風を好機に韓国が攻勢をかけているのではないかという声もあった。

欧州委員会規則は、日本産食品の英国向け輸出に確実に悪影響を与えており、他国産(韓国、中国など)へのシフトが一部にみられる。これは短期的な問題ではなく、一度商品棚を他国産に取られると、規則が解除されても、それを取り戻すには多くの労力とコストが必要になる。従って長期的視点に立つと、早期の規則撤廃が望まれるのはもちろんだが、棚の確保のために関係者の継続的な取り組みが必要とされている。

有効期限を12月末まで延長する改正規則は、9月28日にEU官報(PDF)に掲載され、10月1日に発効する(2011年9月30日記事参照)

(山田貴彦)

(英国)

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