欧州委は必要なしとの見解−日本の貨物船の放射線全量検査−

(EU)

ブリュッセル発

2011年09月21日

欧州委員会は、日本の貨物船と貨物に対する全量検査の必要はないとの見解を示した。ただし、全量検査をするかどうかの判断は加盟各国に委ねられている。

<これまでの検査では基準値以下>
欧州委員会エネルギー総局のジャンセン課長(放射線安全担当)によると、欧州委は、加盟国に4月15日に勧告した、欧州の港湾に到着した日本の貨物船に対する放射線検査の共通基準は適正だとの専門家の意見を、7月19日にECURIEシステム(EU内の緊急情報交換システム)を通じて通達した(PDF)

通達は、6月8〜9日に開催された欧州原子力共同体(EURATOM)条約第31条専門家委員会で提示された意見(PDF)に基づく。同委員会はECURIE通達で提示された4月15日の基準値は適切だとした上で、3月以降に日本を出発した船舶が航行途上で欧州の港で検査を受けていない限りは、引き続き検査を続けるべきだとの見解を示していた。

なお同委員会は、工業品の表面検査については、国際原子力機関(IAEA)の輸送規制で規定されている基準値(ベータ・ガンマ線:1平方センチ当たり0.4ベクレル)が適用されるとしている。また、工業品の取引に使用するため国際的に合意された基準値の構築を目指すよう、欧州委とIAEAに要請している。

また、欧州の港で行われた今までの検査結果で重大な放射線汚染は認められておらず、放射線量はEUの基準値を下回るか同量で減少する傾向にあり、直近の1ヵ月近い間、放射線汚染の報告はなかったという。

欧州委はこの結果を踏まえ、日本からの貨物船と貨物に対する全量検査の必要はないとの見解を示している。しかし引き続き加盟国に対し、日本からの貨物船に異常値の放射線が認められた際は、ECURIEシステムを通じて欧州委に報告するよう求めている。全量検査をするかどうかは各国の判断に委ねられている。

ECURIEシステムの通達や日本からの輸入規制の実施状況などについては、欧州委員会エネルギー総局のウェブサイトで確認できる。

<食品規制の延長は9月26日に採択の予定>
なお、食品規制については、12月末まで延長するとの欧州委員会規則案が9月9日の食品連鎖・動物衛生常設委員会(SCoFCAH)で採択されている。規則案は欧州委の採択後、官報に掲載されて正式に発効するが、採択は9月26日になる予定。

(鈴木由美子)

(EU)

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