家電業界団体が対象品目の削減を要望−私的録音・録画補償金制度−

(ロシア)

モスクワ発

2011年09月09日

家電・コンピュータ製造流通事業者協会(RATEK)は8月24日、2010年10月に導入された録画・録音機能を持つ機器などに対する私的複製補償金制度について、料率の引き下げと対象品目の削減を政府に要望した。制度導入後、徴収機関認定をめぐって係争が続いており、対象製品を輸入する日本企業の中でも補償金を払っている企業、見合わせている企業と対応が分かれている。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<デジカメや再生用機器も補償金徴収対象に>
08年1月に施行された民法第4部によると、私的使用のための著作物の複製は、著作者、実演者、製作者など権利者の許諾がなくても可能だが、報酬は複製に使われる機器や物理的媒体の製造者または輸入者が権利者に支払う、と規定されている。日本では私的録音・録画補償金制度がこれに相当する。

この補償金の支払いは、当局が認定する徴収機関と、製造者または輸入者が協定を締結した上で行われる。連邦文化遺産保護局は10年9月、徴収を行う機関としてロシア権利所有者連合(RSP、会長は映画監督のニキータ・ミハルコフ氏)を認定した。

10年10月30日には連邦政府決定第829号(10年10月14日付)が施行され、補償金の料率や支払いについての規定、対象品目などが制定された。補償金の額はいずれの対象品目も、製造者は販売価格の1%、輸入者は税関での課税価格の1%とされている。

対象品目にはビデオデッキ、DVDプレーヤー、録画・再生機能を持つテレビなど音響・映像機器のほか、電話機、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、フラッシュメモリーといったIT関連機器も含まれている(添付資料参照)。個人や家庭向け以外で、業務用に使用される機器、輸出向けに生産された機器は対象とならない。

<料率引き下げも要望>
RATEKは8月24日、料率の引き下げと対象機器の削減を求める文書を政府に提出した。対象機器から再生用機器やデジタルカメラ、ビデオカメラなどを外すよう要望している。

RATEKは要請の根拠の1つとして、国内138都市の18歳以上の1,600人を対象にアンケート調査をしたところ、私的使用のための複製をしているのは回答者全体の約30%だけで、そのうち複製で主に使用された機器はデスクトップパソコン、ノートパソコン、携帯電話に限られていることを挙げた。

<徴収団体の妥当性で裁判、企業の対応にばらつき>
補償金の料率や対象機器だけでなく、徴収機関の選定も論争の対象になっている。RSPが徴収機関として認定されたことを受け、その地位を狙っていたロシア著作隣接権協会が連邦文化遺産保護局を相手取り、モスクワ市商事裁判所に認定の無効を求める訴えを起こした。裁判所は11年1月に訴えを認めたが、第2審の第9上訴商事裁判所は第1審の判決を棄却、第3審のモスクワ管区連邦商事裁判所も8月12日に第2審判決を支持する判決を下した。ロシア著作隣接権協会は最高商事裁判所に上訴する構えで、紛争は長期化している。

しかし、このような中でも、RSPは制度導入以降、該当機器を輸入する日本企業を含む外国企業に接触を続けており、両者で協定を締結して著作物の私的使用のための複製報酬の支払いを促している。

対象品目はいずれも日本企業がロシア市場で輸入・販売するものに該当し、本制度導入は日本企業のビジネスに大きな影響を与えている。各社の対応は分かれており、RSPと協定を締結、報酬の支払いを始めている企業もあるが、対象品目や料率、徴収機関の妥当性に疑問を持つ企業は、対応方法を社内で検討するなどして協定の締結を見合わせている。欧州企業の中には、徴収機関の認定に関する裁判の結果が出てから交渉を始める方針を取っている企業もある。途中から支払いを始める場合は、制度発足時までさかのぼって支払うことになるという。

欧州ビジネス協会(AEB)が5月26日に政府関係機関、RSPと協議を持った際に、RSPは制度に関する手続きの改善について取り組む用意があると述べている。

(浅元薫哉)

(ロシア)

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