震災後初の日本食品物産展は盛況

(英国)

ロンドン発

2011年06月17日

ロンドン最大の日本食材店ジャパンセンターで4月30日〜5月20日、「かながわ物産展」が開催された。神奈川県内企業15社、45品目の商品が出品され、人気を集めた。震災後では初めての日本食品物産展だったが、風評被害は全く感じさせず、ロンドンでは手に入りにくい地場産品が多かったため、売れ行きも好調だった。

<2月には長崎物産展を開催>
日本には、欧州へ食品を輸出したいがノウハウ不足やネットワークがないため、ためらう中小企業が多数存在する。一方で、英国の日系小売業各社は、集客効果の向上につながる新商品の開拓を図っている。ジェトロはこうした双方のニーズのマッチングを図っている。

2011年2月3〜26日には、ジャパンセンターとの共催で「長崎物産展」を開催した。茶、生麺、ジャム、せんべい、ごま豆腐、干ししいたけのほか、約20種類の焼酎が出品された。ジャパンセンター内に特設された長崎コーナーは大盛況で、特に干ししいたけやインスタントにゅうめんの売れ行きが良かった。また、焼酎の蔵元による試飲会は、期間中一番のにぎわいをみせた。

<風評被害もなく好評のかながわ物産展>
4月30日〜5月20日には震災後初の日本物産展となる「かながわ物産展」を神奈川県の協力を得て、ジャパンセンターで開催した。同展では茶、のり、梅干し、うどん、そば、ビール、ラー油、麺つゆ、マヨネーズなど多様な食品が出品された。今回は生産者の訪英はなかったが、その代わり、ジェトロや神奈川県ロンドン駐在員、横浜銀行の行員などが試飲、試食サービスをサポートした。

当初は原発被災の影響も心配されたが、商品はEUの輸入規制の前に出荷されており、風評被害もほとんどなかった。在庫切れが心配される商品もあり、最終的には4割の商品で8割以上販売という実績を挙げ、特に茶、梅干し、たこせんべいなどが人気だった。

会場がロンドンの中心地だったため地元住民の来場も多く、日本人3割に対し、7割が地元住民だった。総じて「おいしい」「質がいい」などの肯定的な意見が多かったが、「値段が高い」「使い方が分からない」などの意見もあった。また、茶やのりなど一部商品は英国でも知名度は高いが、「英語表記でパッケージされているものが少なく、何の商品か分からない」との指摘も多かった。

<地方の中小企業にはチャンスも>
現在、福島第1原子力発電所の被災を受けて、EUは、神奈川県を含む13都県の食品に輸入規制を設けている。その影響で現在は商品が入ってこないという状況が続いている。特に大企業の商品は食材の産地を特定することが困難で、証明書の取得が難しい状況にある。日本の食品を扱っている企業は在庫を使ってしのいでおり、早期の輸入円滑化が望まれる。

他方、今回の物産展に出品されたような地方の中小企業の製品は、比較的原産地が特定しやすいというメリットがあり、証明書の早期入手が可能だ。最初は大手商品の代替品としての意味合いが強いかもしれないが、海外進出のきっかけになることも期待できる。

そのためにも英語表記はもちろんのこと、商品イメージが連想しやすいような写真を用い、使い方を示したイラストなどを裏面に記載するなど、視覚に訴える、分かりやすいパッケージの工夫が望まれる。

(滝沢将史、中山毅郎)

(英国)

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