ジャナドリヤ祭、日本館に30万人が来場

(日本、サウジアラビア)

リヤド発

2011年05月13日

「ジャナドリヤ祭(正式名称:サウジアラビア伝統と文化の国民祭典)」が、4月29日閉幕した。ゲスト国の日本館には、16日間の開催期間中に約30万人が来場した。「Cool Japan」をコンセプトに、一般市民に日本の総合的な魅力を紹介する初めてのイベントで、日本に対する高い関心と好意、尊敬の念が肌で感じられた。また、フレンドリーで楽しそうなサウジの人たちと身近に接する機会を持てたことは、今後の両国関係深化を目指す上で貴重な経験になった。

<ゲスト国館への来場者数としては過去最多>
サウジアラビアは2008年以来、ジャナドリヤ祭に毎年1ヵ国のゲスト国を招いており、11年は日本がアジア諸国で初のゲスト国になった。日本館には、いすゞ、ソニー、トヨタ、日産、パナソニック、WATERBOOTH(メタウォーター、ササクラ、東洋紡)、日立グループ、ブリヂストン、三菱商事、ユニチャームの企業12社と、経済産業省、国際交流基金、観光庁、ジェトロの4機関が合同で出展した。

日本館は「Cool Japan」をコンセプトに、自動車、デジタル家電、水、環境、エネルギーなどにかかわる最新テクノロジーに加え、武具、甲冑(かっちゅう)など日本の伝統文化、さらにはファッション、ゲーム、アニメという当地の若者にも人気が高い現代の文化など、日本の魅力を総合的に紹介した。

日本館への来場者総数は30万465人、うち館内への来場者が17万8,965人、屋外ステージの集客が12万1,500人だった。1日当たりの平均来場者数は約1万9,000人で、これまでのゲスト国館で最も多かった10年のフランス館の平均1万人の倍近くを動員した。さらに経済企画相、水電力相、日サ友好議員連盟会長のほか、有力王族の家族、親族も多数訪れた。

<日本の技術や文化に強い関心>
特に以下のような展示が来場者の関心を集めた。企業ブースでは、自動車メーカーによる特別展示車(トヨタの「ランドクルーザー」、日産の「PATROL」など)、ソニーやパナソニックの大画面テレビ・3Dテレビ、日立の電子黒板などの最新テクノロジーに加え、展示のために特別に持ち込まれた小型ロボット(トヨタ、日産)も注目を集めた。

国際交流基金の伝統文化紹介ブースでは、サウジアラビアの伝統文化にも通じる武具(刀剣)や甲冑が人気を博したほか、日本画や茶道・華道の実演にも連日多くの観客が集まった。

現代日本のライフスタイルを紹介したジェトロのブースも盛況だった。特に人気が高かったのは、新しいコミュニケーションの可能性を探ったヤマハの対話型ピアノ「Key between people(KBP)」、東海大学の学生が制作したソーラーカー、日本人の日常的な朝・昼・晩の食事を紹介した食のコーナー、コミックカルチャーのコーナーだった。

一般の展示品でも、エクササイズ用乗馬マシン(パナソニック)、体重体組成計(オムロン)、携帯用蚊取りウォッチ(フマキラー)、ジュニアケータイ(KDDI)、500色の色鉛筆(フェリシモ)、着物(銀座テーラー・グループ)、和紙で作ったブリーフケース(大直)、勝手に被写体を探し撮影するカメラ(ソニー)などに関心が集まり、来場者からの引き合いが相次いだ。

<新鮮だったサウジ人の反応>
来場者と接していて特に驚いたのは、多くの若い女性が日本語で「こんにちは」「お元気ですか」「私は日本が大好きです」などと気さくに話し掛けてきたことだ。アニメや音楽などポップカルチャーに対する知識と関心も非常に高く、「日本語を勉強したい」、「日本に行きたい」と話す女性の数が非常に多かった。このようなサウジ人との触れ合いは、日常生活ではなかなか難しいだけに新鮮だった。

また、東日本大震災の被害と、復興に取り組む日本の状況を紹介した屋外の写真展示も多くの注目を集め、励ましのメッセージをもらった。中には、日本語があまりできずにごめんなさいと断りながらも、「日本を信じています。がんばってください」と一生懸命手書きでメッセージを残してくれた人もいた。

屋外ステージで行われた石見神楽や和太鼓の実演、三味線やパーカッション、モダンジャズといった音楽演奏には、長時間足を止めて見入ったり、一緒に輪になって踊り出したり、写真を熱心に撮影する多くの若い人の姿が見られた。ステージは連日平均7,000人以上の観客を集め、週末の夜には、ステージ前では身動きもできないほどだった。

何より驚いたのは、会期も後半になると連日ステージ最前列に多くの若い女性が陣取り、「日本を愛してます」などと日本語で紙に書いた看板を掲げ、黄色い歓声を上げ、熱狂している姿を目にしたことだ。最終日には、彼女たちによって「さようなら」「ありがとう」の看板が掲げられ、日本館は大歓声の中で閉幕した。このような姿は、駐在員でさえも初めて見る光景で予想もしなかっただけに、サウジ人の素顔を見た思いがし、新鮮な感動が残った。

<両国関係強化のきっかけに>
日本館閉幕に当たり、4月29日に実施した閉幕式では、出展準備委員会共同委員長の遠藤茂・駐サウジアラビア大使、鈴木明彦リヤド日本人会会長をはじめ、サウード・アルルーミー王室衛士府ジャナドリヤ祭担当局長も出席して、記念品の授与が行われた。遠藤大使は閉幕式で、「アブドゥッラー国王、ムトイブ王室衛士府長官、そしてすべてのサウジの方々に感謝申し上げる。日本が大震災から復興を果たした暁には、再びサウジの方々に『日本力』をおみせできれば幸いだ」と述べた。

また、ジャナドリヤ祭終了後の5月1日、出展準備委員会共同委員長と主要メンバー数人は、同祭の主催者である王室衛士府の長官で、国王の息子でもあるムトイブ長官を表敬訪問し、直接謝意を伝えた。ムトイブ長官は「日本館は出展パビリオンの中で最も美しい展示を行った。日本の参加は、サウジアラビア国民が日本人の文化や歴史に触れ、学ぶための絶好の機会になった」と語るとともに、「日本は大震災の影響で出展を辞退するのではないかと心配したが、予定どおり出展してくれた日本の“brave”に心から敬意を表する」という手厚い謝辞を述べた。

同長官は、ジャナドリヤ祭にかける率直な思いも語った。

「サウジの伝統や文化を次の世代に受け継いでいくために重要な役割を担っており、毎年良いものになるよう改善していきたい。実は2年前までは男女の日が別々に分かれており、10年に初めて数日間ファミリーデー(男女、家族が一緒に訪問できる日)を設けた。そして今回、(ゲスト国日本の要望もあり)会期のほとんどをファミリーデーにしたことは大成功だった。これを実現するのは、宗教界の反対もあって大変だったが、何とか折り合いをつけることができた。家族がそろって祭りを楽しむことができるのは素晴らしい。今後もこのスタイルが定着するのを期待している。その意味でも、日本の参加とともに歴史に残る祭りだった」

国民的祭典、ジャナドリヤ祭の運営をとってみても、現指導層が国を少しずつ変えていこうとしている様子がうかがえた。

当地の出展準備委員会では、若い層を中心にこれだけ日本への関心が高いのであれば、日本語、文化、芸術などを通じて、民間レベルで今後も何らかのかたちで双方の交流に継続的に取り組むべきだとの声が上がっている。ジャナドリヤ祭参加を契機に、両国間の交流が重層的に広がり、一層の両国関係強化につながっていくことが期待される。

(村橋靖之、米倉大輔)

(サウジアラビア・日本)

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