マイティー、提案解決型の環境対応サービスで成長−欧州の新ビジネスモデルを探る(4)−

(英国)

ロンドン発

2011年03月23日

環境、コンプライアンス対応、トレーサビリティーと、高度化する現代のオフィスマネジメント。マイティー・グループ(MITIE Group)は顧客が抱える問題に対し、常に新しい技術を求め提案解決型サービスの提供に特化することにより、成長を続けている。欧州金融危機を受注増につなげたという同社のビジネスモデルについて、サイモン・ベイデン廃棄・環境マネジメント部長に聞いた。

同社は創業者2人が、1987年に清掃関連企業として南西部のブリストルで起業した。以降、総合ファシリティー・マネジメント・サービスを中心に拡大を続け、売上高172億ポンド(1ポンド=約132円)、従業員5万6,000人を誇るFTSE250(注)企業に成長。主な顧客にバークレイズ銀行、サンタンデール銀行、ロールスロイス、大英博物館などがある。

<顧客の要望を重視>
問:廃棄・環境マネジメント部のビジネスの概要は。

答:オフィスマネジメントに廃棄物処理など環境対応が厳しく求められるようになってきたため、6年前に設立された部門だ。

ベオリア(Veolia)、シタ(Sita)、ベファ(Befa)が既に廃棄物処理を請け負っていたが、当社のアプローチとは全く異なっていた。これら3社を含む通常の事業者は大規模な廃棄物処理施設を保有し、顧客から排出される廃棄物を収集、処理するだけだった。これに対し当社は処理施設を持たずに、顧客の要望に応じた最適なオフィスマネジメント・サービスを提供できる。例えば、各オフィススペースに大量にゴミ箱を置いてゴミを収集しているような場合、資材調達の段階から包装を省くなど、ゴミそのものを減量するところから顧客にアドバイスする。顧客にとっては環境対応も進み、コスト削減にもつながる。

また世界の金融センターの英国では、機密保持などのコンプライアンス対応、トレーサビリティーも重要だ。従来の廃棄物処理方法では限界もあるが、当社は顧客のために常に最新の解決策を探している。例えば、金融機関からは膨大な量の書類が廃棄される。これらは機密性の高い情報が含まれており、漏洩すると信用が揺らぎかねない。現在は収集して処理場で溶解処理しているが、廃棄書類を再生紙に処理できれば情報漏えいリスクもなくなり、環境負荷やコストも減る。

このように、顧客と一緒になって新たな課題に取り組んでいく提案解決型サービスが、当社のビジネスモデルだ。廃棄・環境マネジメントのワンストップショップを目指している。

<金融危機後にも受注増>
問:欧州金融危機の影響は。

答:銀行などの金融機関は多くの支店や大規模な本社ビルがあるため、当社の主要顧客になっている。欧州金融危機で大打撃があると思われたが、逆に受注が増えた。なぜなら金融機関は徹底的なコスト削減に取り組む必要に迫られており、当社はそれに応えることができるからだ。

これまで金融機関は、コスト意識があまりなかった。調達したばかりの数千人規模のオフィスのゴミ箱を、リサイクル対応のために翌年には入れ替えるような状態だった。そもそもゴミを減らすような考えをもっていなかった。目に見えるかたちで提案していくことにより、例えばサンタンデール銀行では、トータルのエネルギーコストが3分の1になった。

さらに英国中心から欧州各国へと、ビジネスを拡大し始めている。ほかの国のファシリティーマネジメントは自社対応が主流で、まだアウトソース化が進んでいない。当社が英国で蓄積したノウハウを十分生かせると考えている。現在はアイルランドを足掛かりに、同じユーロ圏のドイツ、フランス、ノルウェーで事業を展開している。

<日本の環境技術にビジネスチャンス>
問:日本企業にとってビジネスチャンスは。

答:私はもともとは機械エンジニア。マイティーに入社して1年ほどだが、入社前から20数年の対日ビジネス経験がある。日本の環境技術は進んでいる。以前から、世界でも類を見ない細かいリサイクル分別に取り組んでおり、環境先進国だと考えている。日本では当たり前と思われていることが、ビジネスチャンスにつながる可能性がある。

当社は、常に新しい技術を探している。例えば、オフィスに設置できるような書類の再生紙化設備、ダンボールのエタノール化設備などだ。金融機関をはじめとするオフィス需要を考えれば、大きなビジネスチャンスがある。

日本とのビジネスに時間がかかることは理解している。当社にはビジネスニーズと新技術に投じるための潤沢な資金があるので、海外に展開したことがない革新的な日本企業との協力の可能性も常に探している。

(注)ロンドン証券取引所の上場企業の時価総額上位250社。

(村上久)

(英国)

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