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不発に終わった3月11日「怒りの日」

(サウジアラビア、アフリカ、北アフリカ)

リヤド発

2011年03月16日

インターネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス「フェースブック」を通じ、「Day of Rage(怒りの日)」として抗議デモが呼び掛けられていた3月11日、国内では大方の予想どおりデモは開催されず、平穏に終わった。地元主要紙もデモの発生を報じていない。

<杞憂に終わった警戒>
米国など各国大使館の多くは自国民が混乱に巻き込まれるのを避けるため、3月11日の外出を禁止または控えるよう通知していた。一部の日本企業の中には同日の外出を禁止した企業もあったが、結果として杞憂(きゆう)に終わった。

筆者は礼拝後の15時半から18時にかけて、事前にデモ開催がうわさされていたモスクやオフィス、商業施設が集積するリヤド市内の中心部と官庁街に出掛けてみた。外出している人の姿は通常の金曜日よりも少なく、通常なら16時以降開店する商店も閉じているなど非常に静かだった。多くの人がこの日は外出を控えたようだ。

ただし治安当局は、定期的にヘリコプターで市内を巡回したほか、中心部の目抜き通り(キング・ファハド通り、オライヤ通りなど)では、約20メートル間隔で警官(通常の交通警察)を配置し、空き地には治安部隊を集結させるなど、厳戒態勢で不測の事態に備えていた。この様子から、当局もデモを相当に警戒していた様子がうかがえる。

ロイターはシーア派が多く住む東部州ホフーフ市で200人規模のデモがあったと報道(3月11日)したが、その真偽は確認されていない。また、実際に何も起こらなかったため、フェースブックであおっているのは国外の勢力だという見方もある。

特筆すべきは、当局が外国メディアの当日の取材を許可したことだ。「日本経済新聞」を含む複数の記者がリヤド中心部のホテルに待機して、推移を見守っていたが、肩すかしをくらった。

<安定と対話を重視する政府>
インターネットを通じたチュニジアやエジプトでの政変成功に触発され、サウジアラビアの動きがどうなるか、原油の安定供給や油価の高騰、湾岸諸国の王制との関連で世界の注目を集めていた。

アブドゥッラー国王や政府は、国内の混乱を未然に防ぐ意味からも、2月23日の国王の病気療養からの帰国に合わせて総額1,350億リヤル(約3兆円)の大規模な社会福祉策を発表したほか、内務省があらためてデモや抗議集会の禁止を徹底したり、最高ウラマー評議会など宗教界がデモ行為はコーランに依拠する現制度に反するという声明を発表したりするなど神経を使っていた。

3月9日には、政府、王族を代表するかたちでサウード外相が記者会見し、政府は、a.国家の安定を脅かす外部からのいかなる内政干渉も断固拒否する、b.政府は国家と国民の利益を第一に考えている、c.国の法律や制度のよりどころとなっているイスラムの教えを逸脱することがないようにするべきだ、d.国王は国民に対していつでも門戸を開いており、対話を重視している、など指導部の立場を内外に訴えた。

事前に筆者が国内のビジネスパーソンや政府関係者十数人に「怒りの日」について予想を聞いたところ、「デモが全国規模で行われる可能性は少なく、あったとしても少人数の限定的なものにとどまるだろう。心配する必要はない」という声が100%だった(2011年2月24日記事参照)。ナイーフ内務相は3月12日、国民の良心に従った賢明な判断に感謝するとの声明を出した。

<3月20日にデモの呼び掛け>
バーレーンでの反政府デモの高まり以降、日本では、国内でみられるようになった市民の政治改革を求める行動や東部州でのシーア派住民による小規模デモ、貧富の差と失業率の高さによる若者の不満などがすぐにでも宗派対立や石油供給能力に影響し、政治体制の転換に結び付くかのような報道が目立った。しかし、個別の事象を注意深くみると、それぞれ抗議の声を上げているプレーヤーは異なる。いずれも別の目的、事情に基づくもので、性質の違うものだ。従って、これらの動きが社会全体に連鎖し、不安定化するというレベルには至っていない。

一方、「サウジ革命」と名付けられたソーシャル交流サイトで3月20日にデモを呼び掛ける動きが活発化しているのも事実だ。11日の結果を踏まえて20日にデモが行われるかどうか、今後この種の活動がさらなる力を得るかをみる試金石にもなろう。バーレーンなど周辺諸国の情勢緊迫化とともに引き続き注視する必要はあるが、現時点ではサウジアラビアへの渡航やビジネスについて必要以上に心配する必要はないと思われる。

(村橋靖之)

(サウジアラビア・中東・北アフリカ)

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