アドバンスト・サイクロン・システムズ、高効率の粉体分離器でフィルター不要に−EU環境展参加企業に聞く−

(日本、ポルトガル)

欧州ロシアCIS課

2011年02月15日

アドバンスト・サイクロン・システムズは、気体に含まれている粉末や粒子を効率よく回収する粉体分離器(サイクロン)の開発・製造を手掛ける。フィルターを使わずに粒子などの高い回収率を維持できる点が特徴だ。

<フィルターなしで高い回収率>
ペドロ・アラウホ最高経営責任者(CEO)によると、アドバンスト・サイクロン・システムズは、粉末を含む気体から高い回収率で粉末だけを取り出すサイクロン開発技術を生かし、大気汚染源の粒子状物質を取り除く装置や、液状の原料を乾燥させるなどして粉末状の生成物を取り出す装置を製造している。2008年に設立され、ポルトガル・ポルトに本社を置く、従業員10人の小企業。

同社の強みは、粒子回収時にフィルター類を併用せずに、粒子などの高い回収率を維持できるサイクロン開発技術だ。同技術を基に商品化したのが、サイクロンシステム「ハリケーン(Hurricane)」や、機械式または静電式サイクロンシステム「リサイクロン(ReCyclone)」だ。

サイクロンは気体を渦を描くように装置の上部から注入し、装置の内壁に衝突した粒子だけを重力で落下させ、粒子と気体を分離する。通常はサイクロンとバグフィルター(注)を併用して、大気汚染源となる粒子を気体から取り出す。フィルターを組み合わせることで、微細な粒子の回収率を高められる。ただ、フィルターは蓄積した粒子の除去などのメンテナンスが別途必要になる。同社のサイクロンはフィルターなしで、粒子の回収率を維持することができるため、フィルターとそのメンテナンスが不要だ。

フィルターを通さずに粒子の高い回収率を維持できるサイクロンシステムについて、アラウホ氏は「競合企業は存在するものの、(同社商品の)高い効率性は当社に優位性がある」と自信をのぞかせる。

<販売パートナーを探して日本に売り込み>
サイクロン開発技術はさまざまなビジネス分野に応用できる。サイクロンは「不要な」粒子を回収する排出制御面と、「必要な」粒子を回収する生成物回収面の両方に活用でき、排出制御ではボイラー、溶鉱炉、ドライヤーに、生成物回収では製薬、食品、化学などに幅広く活用されている。同社はこれらの分野で、これまでにポルトガルだけでなく、ブラジル、フランス、スペイン、米国で納入実績がある。特にブラジルを重要市場に位置付けており、「同じポルトガル語で商談ができる」(アラウホ氏)ことを理由の1つとして挙げている。

今回の来日は、これらの分野への販売が可能なパートナーを探すことが目的。欧州市場へは本社があるポルトガルから直接輸出しているが、「欧州から遠く離れた日本や韓国市場へは直接輸出ではなく、現地パートナーを通して販売していく予定」という。

日本市場について、アラウホ氏は「当社商品の売り込み先として、日本は大きな市場と考えている。日本経済は現在芳しくない状態ではあるが、今後の早期回復に期待したい」と述べ、参入に意欲を示した。

(注)排ガスなどに含まれる粒子などを布などの細かい穴を通して回収する工業用処理装置の1つ。

(古川祐)

(ポルトガル・日本)

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