対チュニジア輸出を一部企業は停止、エジプト情勢は注視

(北アフリカ、スウェーデン、中東、アフリカ)

ストックホルム発

2011年02月08日

カイロで取材をしていたスウェーデン放送特派員が、混乱の中で襲われ、重傷を負う事件が2月3日に発生した。ラインフェルト首相は同日、遺憾の意を表明した。近年、北アフリカや中東への輸出は増加傾向にあったが、現在の北アフリカ情勢を受け、対チュニジア輸出を停止する動きもある。エジプト情勢は多くの企業が注視している段階。冬場に人気のエジプト観光などには影響が生じている。

<スウェーデン放送カイロ特派員が襲われ負傷>
スウェーデン放送のカイロ特派員スンズストレーム氏が2月3日、背中を刺され、頭蓋骨にも損傷を受け、病院に収容されていることが分かった。同行していた同僚によると、ムバラク派のデモ隊に拉致され暴行を受けたという。ラインフェルト首相は同日、「このようなことは絶対に許されない」との声明を出した。これに先立ち、スウェーデンの有力紙「アフトンブラーデット」紙の記者がデモ隊に唾を吐きかけられ、脅かされる事件もあった。同紙は「ジャーナリストがスパイと見なされ、暴行の対象とされる危険な状態にある。現地警察も信用できない状況」と報じている。

<住宅建材大手企業がチュニジア向け輸出を一時停止>
近年、北アフリカ・中東向けの輸出が急激に伸びている。対チュニジア輸出額(表参照)をみると、09年1〜11月は前年同期比14.2%増の8億4,940万スウェーデン・クローナ(1クローナ=約13円)、10年1〜11月には39.4%増の11億8,384万クローナと大幅に伸びた。その主要部分は木材・建材だ。住宅建材メーカー大手のマルティンソンは11年1月18日、チュニジア向けの輸出を停止した。混乱が長引けば輸出への深刻な打撃になることが懸念される。

スウェーデンの対チュニジア、エジプト輸出

また、通信機器大手エリクソンはチュニス事務所を1月14日にいったん閉めたが、1週間後に再開した。エリクソンはチュニス事務所で110人のスタッフを雇用している(スウェーデン人スタッフはいない)。

<エジプト観光には既に影響>
エジプト向け輸出も09年1〜11月に、前年同期比7.9%増の55億9,763万クローナ、10年1〜11月は7.3%増の60億827万クローナと順調に伸びている。

スウェーデン貿易公団の中東・アフリカ地域担当主任パウルソン氏は「スウェーデン企業は現在エジプト情勢について様子見をしているところだ」と述べている。エジプトにはエリクソンのほかABB(重電)が進出している。

一方、旅行業には既に影響が出ている。チャーター機を利用したパック旅行専門の旅行会社はエジプト旅行を中止している。大手のアポロは、エジプトは冬季に一番人気があり毎年5万5,000人が訪れる旅行地のため、「経済的痛手は計り知れない」と述べている。

(三瓶恵子)

(スウェーデン・中東・北アフリカ)

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