アラブ型政変の可能性、当面なし−現地有識者の見方−

(カザフスタン)

欧州ロシアCIS課

2011年02月04日

1990年から現職のナザルバエフ大統領による長期政権が続いているが、現地有識者は、アラブ諸国でみられるような政変劇はシナリオとしてはあり得ても、実際に起きる可能性は低いとみている。

チュニジア政変に端を発したアラブ諸国での一連の反政府活動の影響について、現地有識者2人に聞いた。インタビューは1月末から2月初めにかけて実施した。

<政変が起きるとすれば現大統領が去った後>
○政治コンサルタントのカザフスタン・リスク・アセスメント・グループ代表、ドスィム・サトパエフ博士
中央アジアには旧ソ連時代末期からの長期政権が続く国がある。チュニジアやエジプトなどのアラブ諸国で勃発した騒乱は、将来、カザフスタンやウズベキスタンでも起こり得るシナリオだ。これらの国と国境を接するキルギスでは、2005年のチューリップ革命でのアカエフ大統領の失脚とバキエフ政権の誕生、そして10年の政変によるバキエフ政権の崩壊とオトゥンバエワ大統領を首班とする臨時政権の発足と、既に2回の政権交代劇が現実のものとなった。

カザフスタンやウズベキスタンには、経済発展の恩恵を十分に享受していない国民が多い。例えば、カザフスタンは07年にサブプライム・ローン問題が顕在化し経済が疲弊したが、それ以前から経済の危機的ともいえる状況下に置かれ続けた人たちがいる。

未来を予想できない不安よりも日々直面する不公平感のほうが強く感じられるようになったら、市民は不満に耐え切れなくなって声を上げるだろう。ただ、そうした革命が起きる可能性を語るのは時期尚早だ。社会の緊張の高まりだけでは、革命を起こすには不十分だからだ。アラブ諸国の政変がカザフスタンで起こり得るのは先の話。少なくとも現職の大統領が政権を去り、その空白を確保しようといくつかの巨大な政治力が競い合うような事態に発展する場合と考えられる。

<大統領自身がチュニジア政変から学ぶ>
○ビジネスコンサルタントのオープン・カザフスタン・コンサルタント代表、スルタンベク・トゥルタバエフ氏
いったん手にした権力を長期にわたって保持しようとするのは、万国共通のことだ。当地の政治エリートも同様だ。彼らの発想は、現職のナザルバエフ大統領の在職期間をいかに長く安定させるかというものだ。

当地のマスコミには、アラブ諸国で起こっているような政変がこの国で発生する可能性について触れたものはない。マスコミは政権の管理下にあり、このことは政治エリートたちがチュニジア政変を事実上、無視したことを意味する。背景にはナザルバエフ大統領の20年までの任期延長の是非を問う国民投票を何とか実現しようとする議論に、彼らが忙殺されていた事情もあるだろう。

政治エリートには、仲間内の結束や自らの政治責任といったものが欠如している。大統領に対して、近代化や発展に結び付くような積極的な提案は基本的にしない。自分たちの社会的地位や財産の保全にのみきゅうきゅうとしている。新たなアイデアを首唱するのは大統領だけなのだ。

1月末、国民投票は実施されない代わりに、任期満了(12年)前の大統領選を実施できることが決まった。取り巻きの政治エリートではなく、大統領だけがチュニジア政変から学ぶべきものを学び得たというわけだ。

(下社学)

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