環境技術開発に尽力−アジア大洋州の再生可能エネルギー政策−

＜ハイブリッド・電気自動車への免税を拡充＞
09年8月発表のグリーンテクノロジー政策では、具体的方針として、a.環境技術を促進するための国立環境技術センターを設立し、環境への意識を高める活動に2,000万リンギ（1リンギ＝約26.8円）を配分する、b.10年4月に環境技術関連の国際展示会を開催する、c.行政都市プトラジャヤとIT都市サイバージャヤを環境技術のモデル都市として開発する、d.政府調達でも環境に優しい製品・サービスを優先的に採用する、ことが盛り込まれた。

資金面の支援も整備され、環境技術開発のため15億リンギ規模のファンドを設立、環境技術を供給・利用する企業へのソフトローンを提供している。このローンは、国立環境技術センターが申請窓口となり、融資限度額は供給企業が5,000万リンギ、利用企業が1万リンギ。融資は6割を政府が保証し、残りの4割を銀行が保証している。

国内の自動車産業部門の発展を目的としたNAPでも、グリーンテクノロジー分野への手厚い支援が決まった。ハイブリッド車と電気自動車に対して、物品税免除や研究開発補助金に加え、通常なら5年間にわたり法定所得の70％を課税免除するというインセンティブ「パイオニア・ステータス」を、10年間にわたる100％課税免除に拡大した。

＜環境に優しい建物の建築に免税措置など＞
「グリーンビルインデックス（GBI）」を取得した建物に対する優遇措置も、09年10月に導入された。GBIは地球環境に優しい建造物に対して発行される認証制度で、09年5月21日に新設された。エネルギー・水効率性、建物内の環境対応度、リサイクル可能で環境に優しい資材・資源の利用度などを評価する。建物所有者、不動産購入者が以下の優遇措置の対象となっている。また、新築、改築でも優遇措置を受けられる。

［建物所有者への優遇］
○GBI認証の取得にかかった追加支出額の100％相当額の課税免除。
○法定所得の100％まで経費相殺を認める。
○1つの建物について、GBI認証は1回のみ。
○09年10月24日から14年12月31日の間にGBI認証を付与された建物に対して有効。

［不動産購入者への印紙税免除］
○GBI認証の取得にかかった追加費用に対する印紙税を免除。
○対象物件はGBI認証が付与された建物と住居用不動産。
○対象者は最初の購入者のみ。
○09年10月24日から14年12月の間に履行された売買契約書に対して有効。

＜省エネ向上へ輸入税、売上税の優遇措置＞
このほかにも、アブドゥラ前首相が08年上半期に起きた世界的な燃料価格高騰対策として、国内の省エネ加速を目的に導入した省エネ関連の免税措置がある。具体的には以下の3点。

（1）省エネ仕様の設備機器に対する免税措置
○高効率モーター、絶縁材など省エネ仕様の電気・電子品に対する輸入税と売上税を免除。
○省エネ仕様の国産家電（冷蔵庫、エアコン、電灯、扇風機、テレビなど）の購入に関する売上税を免除。

（2）再生可能な原料による発電への免税措置
○第三者の使用目的で輸入する太陽発電システムの輸入税と売上税を免除。
○国内製造会社から太陽熱利用設備を購入する場合の売上税を免除。

（3）ハイブリッド車に関する優遇措置
○ハイブリッド車は輸入税100％、物品税50％を免除（2000cc未満の完成車の新車などの条件付き）。

これらの税制優遇は、財務省が08年8月30日から10年12月31日に受理した申請に対し有効となっており、10年末で期限が切れる予定。中でも税率10％の売上税のインセンティブによるメリットは大きく、特に家電関係の進出日系企業は優遇税制を継続するよう強く要望している。

＜再生エネルギー法案を検討へ＞
政府は20年までに2,080メガワットの再生可能エネルギー開発を目標としており、再生エネルギー法案を現在検討している。早ければ10月の国会に提出される予定だ。

また10月15日にナジブ首相が発表する予定の11年度国家予算案で、同首相が特に重点を置く再生エネルギーに関する優遇措置が盛り込まれるといわれており、同分野への投資がより有利になる環境が整備されそうだ。

（手島恵美）

（マレーシア）