新たな円借款案件への影響を懸念

(ウズベキスタン)

タシケント発

2010年09月13日

当地に日本人駐在員を置く日系企業は、現時点では円高の影響を強く感じてはいない。しかし、今後の円借款案件では価格面で不利になることを懸念する声が聞かれた。

<既往ビジネスへの影響は軽微>
当地の商社関係者によると、一般的な商品の輸出入取引を伴うビジネスは限られていることから、急激な円高の進行による負の影響はほとんどないという。

既往の円借款案件についても、契約は円建てで行っているものが多いため、機材の納入に当たって円高の影響はないと指摘している。相手先から契約金額の大幅な見直しを求められているところも、「契約書に為替レートによる価格見直しは行わないと明記しているので、契約条文に従って完全履行を粘り強く求めていく」という。「前金は入金済みで残金に対する見直し要請もない。為替予約していると思われる」など、為替リスク軽減の対策も奏功しているようだ。

<新規ビジネスは価格面で不利>
しかし、これから入札が行われる借款案件については話が違う。「円建ての日本製品が欧米企業に比べて価格面で劣勢になるのは避けられない。どこの国の企業と連携をするべきかの検討を迫られている」という。入札そのものへの参加にも影響を与えかねない状況にあるようだ。

円建てでの契約を続けている限りは特段の対策は不要かもしれないが、今後、相手先からドル建て契約への変更要請がある場合は対策が必要になりそうだ。「以前は円とドルとの間での金利スプレッドが円建てにするメリットといえたが、今はほとんど差がなくなっている。相手先からの変更要望が今後ますます強まるならば、現地法制度とも照らし合わせながら、円貨相当ドル価額での契約などへの移行も検討する必要が出てくるかもしれない」と語る商社関係者もいる。

<金融システムによるトラブルの恐れも>
外為管理が厳しいウズベキスタンでは、契約が円建てだからといって安心していられない事情もある。当地のバイヤーが支払いのための外貨送金を行う際、支払代金の現地通貨スムで決済通貨のドルを購入するのに半月から1ヵ月くらいかかってしまうと、その間も為替が変動するため必要な額のドルを購入できなくなるトラブルも発生する。スム安の進行を見込んでバイヤーがスムを差し増し、ドル建て支払額は確保できたとしても、そこに急速な円高が加わると、円建ての売掛金回収に支障が出るといったケースもあるようだ。

「日本からの輸入に合わせて現地からの輸出を増やしていくことが、究極の為替リスク対策なのかもしれない」というように、悩みが多いようだ。

(末廣徹)

(ウズベキスタン)

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